鼓の音:上村松園の美人画

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上村松園は、金剛巌に師事して能を楽しみながら、自ら鼓も打った。この「鼓の音」と題した作品は、鼓を打つ自分自身をイメージ化したもののようである。画面からは、鼓の音が聞こえてきそうな感じさえする。

1940年のニューヨーク万博に出品され、日本的な美の典型として絶賛された。じっさいこの絵を見た現地の人々は、遠近法の不在や色彩の抽象化など、西洋美術とは真逆のものをこの絵に感じて、新鮮な驚きを味わったと思われる。

着物の赤と帯の青、そして鼓や文様に施された黄色など、原色を組み合わせながら、決してけばけばしさを感じさせない。かえって静謐さを感じさせるのは、日本的なものの雰囲気が自然ともたらすのであろう。

(1940年 絹本着色 77.0×95.7cm 奈良市、松柏美術館)





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