ABC予想証明に触発されたこと

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先日NHKスペシャルが数学の問題をテーマに取り上げていたのを興味深く見た。それはABC予想証明というテーマで、具体的には、「数学者は宇宙をつなげるか?abc予想証明をめぐる数奇な物語」というようなものだった。小生は数学の専門家ではないので、あまり立ち入ったことは言えないが、この番組から触発されて考えたのは、数学をアプリオリな総合判断だと主張したカントの説であった。

今日の常識的な意見では、数学はアプリオリな分析判断の領域であって、それを総合判断と主張したカントは誤っていると考えられている。それをいち早く指摘したのは、バートランド・ラッセルや論理実証主義の学派だったが、今日では支配的な意見となっている。

この番組は、そうした常識を前提にしては、しっくりと解けないものがあると説明していた。数の世界には、足し算の世界と掛け算の世界がある。掛け算の世界は完全に分析的な判断の世界であって、すべてが論理的に説明できる。ところが足し算はそうはいかないという。足し算の世界は、完全にアプリオリな分析判断だけではカバーできない、余剰のようなものがあるということらしい。足し算というのは、まさしく総合判断の領域である。別のものを足し合わせて、つまり総合して、その結果得られる第三の数字を対象としているからである。

この足し算が突き付ける問題こそが、カントの言ったアプリオリな総合判断の領域に属するのではないか。数学の専門家でない小生には、こうした大雑把な言い方しかできないが、カントは数学の総合的な面に気が付いていたのではないか。そう思ったのである。





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