芸術をモチーフにした四枚組の装飾パネル。ダンス、絵画、詩、音楽のそれぞれが、女性の姿を通じて表現されている。とはいっても、芸術のイメージがストレートに表現されているわけではない。女性のポーズからして、なんとなく結びつくといった気持ちを起させるようになっている。
四点の作品は、時間を通じて結びあっている。ダンスは朝方のさわやかな空気を、絵画は真昼時の強い日差し、詩は黄昏時の金星の光、音楽は月明りを、それぞれ表現することで、これら四つの芸術が、一日の時間の流れのなかに配置されている。
上の絵はダンス。ミュシャがなぜ四つの芸術のなかにダンスを含ませたのか。世紀末のパリではダンスが流行していたから、それを念頭に置いたのだろう。この女性は、朝のさわやかな空気の中で、かろやかに身を動かしている。ダンスの真似ごとをしているのだろう。その視線には見ているものをを挑発するところがある。
これは絵画。真昼時の強い日差しを浴びて、女性が花をもてあそんでいる。彼女の視線はその花にくぎ付けにされている。この女性のイメージがなぜ絵画と結びつくのか。
(1897年 紙にリトグラフ 各60×38㎝)
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