眼鏡橋:竹久夢二の美人画

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「眼鏡橋」と題したこの絵も、「長崎十二景」シリーズの一点。長崎名所の眼鏡橋をバックに、傘をさしや女性の半身像を大胆に配した構図である。眼鏡橋は、日本初といわれる石造りの橋で、中国から職人を呼び寄せて作ったという。橋を支える二つのアーチが、水に映って眼鏡のように見えることから「眼鏡橋」と呼ばれて親しまれた。

眼鏡橋はいまでも長崎市街の中心部にあって、多くの観光客をひきつけている。周囲は近代的なビル群に取り囲まれ、いかにも都会の観光スポットといった趣だが、この絵の中の眼鏡橋は、低い家並みを背景にして、のどかな風情に見える。

橋はともかくとして、前景の女がつやっぽい雰囲気を醸し出している。しぶい茶染めの単衣に真っ赤な帯の組み合わせが、にぎやかな色彩感をもたらしている。色気のある絵である。

中国風の服装をした男が荷物を担ぎながら歩いているが、これは異国情緒豊かな長崎ならではの眺めであろう。

(1920年 紙にペンと水彩 36.5×27.0㎝)




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