ヒアシンス姫:ミュシャの世界

| コメント(0)
m24.1911.hyacinth.jpg

ミュシャはチェコに戻ると、「スラヴ叙事詩」シリーズの制作にはげむ傍ら、ポスターなども折に触れて制作した。「ヒアシンス姫」はその代表的なもの。バレー劇「ヒアシンス」のために制作された。モデルはバレーの主役アンドラ・ソドラコヴァ。当時のチェコの人気女優だった。

スラヴ風の衣装に身を包み、ゆったりと椅子に腰かけたモデルは、ヒアシンスをデザインした冠をかぶり、またネックレスやイアリングにもヒアシンスをあしらっている。左手に持っ輪が何を意味するのかはっきりしないが、ヒアシンスが鍛冶屋の娘であることからすると、鍛冶屋の道具と関係があるのかもしれない。

円形を背景にしているのは往年の手法そのまま。その円形の中には、鍛冶道具が描きこまれている。しかし、以前の作品のような過剰な装飾はない。

モデルは少女のようなあどけない表情を見せているが、腕は太くたくましく、いかにも鍛冶屋の娘という風情を感じさせる。ミュシャはこの絵に、祖国チェコのたくましい女性像を盛り込んだのではないか。

(1911年 紙にリトグラフ 125.5×83.5㎝)






コメントする

アーカイブ