三粋人経世問答:2022年参院選を語る

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無覚先生:今回の参院選では、自民党が単独過半数を占めたうえに、いわゆる改憲勢力が三分の二以上を占める結果になりました。一方、野党のほうは、立憲が大幅に議席を減らし、共産党も減らすなど、去年の衆院選に続いて退潮傾向を防げなかった。こうした傾向はしばらく前から指摘されていたことで、選挙は水物とはいうものの、与党有利の予測がそのまま的中しました。それには、ウクライナ戦争がおきて、国民の間に安全保障への関心が高まったことなどが大きく働いていると思うのですが、つい最近起きた安倍元総理の射殺事件も影響しているのかもしれない。安倍元総理のことはどう思いますか。

俄然坊居士:安倍さんへの同情票はあったと思いますよ。今回は前回より投票率がのびていますが、そのかさ上げされた部分を安倍さんへの同情票が埋めたということはあると思います。日本人には昔からそういう傾向がありますから。

静女史:私が気になったのは、自民党の候補者が安倍さんの死を利用したように見えたことです。これはテロだと盛んに強調し、自民党はテロと戦うなんていっていた候補者がいましたが、今回の事件はテロなんでしょうか。

無覚先生:この事件に政治的な背景はないようですから、いわゆるテロの定義にはあてはまらないでしょうね。報道で見るかぎり、犯人は安倍さんに個人的な遺恨を抱いていたようですから、遺恨による殺人事件と見ることができる。しかし、その犯人が元自衛官だったこととか、安倍さんが犠牲になったことが、実像以上にこの事件を政治的な色合いに染める要素はあったといえる。

俄然坊居士:元自衛官が犯人だったというのも衝撃的ですが、安倍さんの警備がほとんど機能していなかったのもショッキングでしょうね。犯人は全く邪魔を受けずに堂々として目的を達した。堂々というのもなんですが、要するに安倍さんともあろう人を、いとも簡単に殺せたわけです。一体日本の警備公安警察はどうなっているのか、という嘆きをあちこちで聞くことができます。日本の保守層としては、最も見たくないものを見せられたということでしょうな。

静女史:警備公安警察のことはあまり知りませんけど、元総理大臣が、選挙期間中に行った応援演説の会場で、簡単に殺されてしまうというのは、たしかにみっともない話ですわね。

無覚先生:日本の権力機構にある種の弛みがあるということかもしれない。弛みがあるというか、緊張感がないというか。おそらく日常的に弛んでいるんでしょう。だから肝心な時に、マニュアル通りの行動もできないということではないか。なにせ、犯行現場をボオーっと見ていたということらしいから。

俄然坊居士:犯人のほうも気合が入っていたんでしょうな。今回の場合には個人的な遺恨によるものということらしいですが、それにしては入念な準備をしたうえで、かなり冷静に行動している。そこは自衛官時代の体験が生きているのでしょう。その体験を、個人的な遺恨晴らしに利用されるのでは、自衛隊は何のためにあるのかわからなくなる。ここは徹底的な再教育を実施して、国として立派な自衛官を育てる努力をせねばあかんでしょうな。

無覚先生:今回の自民党の勝利は、安倍さんのことのほかに、ウクライナ戦争に直面して、国民の間に安全保障の意識が高まったということも指摘できる。安全保障の問題になると、自民党が圧倒的に優勢に立てますからね。野党の諸君には、安全保障の問題に正面から取り組むことを避けているという印象を、国民の多くが抱いている。したがって、安全保障をどうするかという問題については、自民党は有利になれる。今回はそうした事情が自民党に都合よく働いて、大勝につながったといえるのではないか。

俄然坊居士:たしかに安全保障は重要なことです。ウクライナ戦争が日本人に与えた教訓は、国の力の弱い国民はひどい目に合わされるということです。ヨーロッパの諸国は特にそうですが、国あってこそ始めて国民もある。国が弱ければ国民は隣国に侵略され、塗炭の苦しみを舐めるはめになる。なんだかんだ言って、国の力を強くすることを国民全体で考えねばならない。そういう雰囲気が、ウクライナ戦争をきっかけにして高まってきたのだと思います。

静女史:それって日本人が全体として右寄りになるっていうことですよね。でもそうした傾向は、ウクライナ戦争が起きる前から強まっていたように思います。安倍さんについては色々な見方をすることができますが、日本人のメンタリティーを右寄りに持って行ったことは間違いありません。そういう点では、今回の自民党の勝利は、安倍さんの怨念がもたらしたといえるかもしれませんね。

俄然坊居士:それはそうかもしれませんが、それ以上に野党のだらしなさもあると思いますよ。国民が右寄りになっていくことの背景には、野党がそれを許しているという事情もある。今回の選挙では、野党はほとんど存在感を発揮できなかった。だいたい、弱い連中がてんでバラバラにやっていては、強い相手にかなうわけがない。それが分かっていながらてんでバラバラにやっているわけだから、なかば自覚的に自民党を応援しているといってもよい。情けない連中ですよ。戦う気概が全くないし、戦う前から敵に塩を送っているようなものです。

無覚先生:野党といっても、維新のように極右的なものから、共産党まで、実にバラエティに飛んでいます。それをまとめるというのは至難なことではないですかね。しかしまとまらないと勝てないというのも事実なので、野党の諸君にはいまひとつ智慧を働かす余地があるのではないか。

静女史:維新の会とか国民民主党とかは、野党とは言えないのではないでしょうか。私は自民党の補完勢力と思ってますけど。

無覚先生:維新は思ったほど伸びなかったですね。もっとも比例票は立憲を上回ったといいますけど。それにしては、東京はじめ東日本ではあまり伸びなかった。今回は全国政党を目指すということでしたが、結果はそうはならなかった。東京では、維新の代わりに令和新選組が勝った。維新と新選組の対決というと、幕末の薩長藩閥と徳川佐幕の対決を思い出させます。その対決が西日本では維新に、東日本では新選組の勝利につながった。歴史の因縁のようなものを感じさせますね。

俄然坊居士:今回は、その長州閥の巨頭というべき安倍さんが殺されていなくなったわけで、今後は藩閥の勢いがしぼんでいくのではないか。岸田さんは広島の出身だが、藩閥へのこだわりはなさそうだ。それはそれとして、立憲の敗北は深刻なようですな。このままだと、昔の社会党が解体したように、解体するのではないか。

無覚先生:ところで、今回の改憲勢力の大勝利によって、改憲の動きが勢いづくのではないか。それについては、どう思いますか。

俄然坊居士:以前にも改憲が可能な状況が生まれたことがあったが、なかなか前へ進まなかったのは、やはり政治家の怠慢だと思いますよ。安倍さんは、口では改憲改憲と叫びたてるが、実行が伴わない。現行憲法の規定を残したまま、自衛隊を合憲にする規定を追加するなどといった、小手先の対応で済まそうとするし、しかもそれでさえも進めることができなかった。とは言っても、今回の勝利は安倍さんの置き土産としての面もあるのだから、改憲勢力は安倍さんに報いるためにも、改憲を現実に推し進めるべきです。それも小手先のことではだめです。抜本的に憲法の条文を組み替えて、交戦権の規定を盛り込んだり、国民に国を愛する義務を課したりして、積極的に国の安全を確保する方向へと変えていくべきなんです。愛国義務を憲法に規定しておきさえすれば、あとはそれをもとに、法律で徴兵制度を導入するなど、いくらでもやりようがある。日本はウクライナ戦争を教訓にして、いまこそ富国強兵を国是として復活させねばならない。でなければ、いたずらに亡国の道を歩むだけです。

静女史:富国強兵だなんて、明治時代に戻るような感じだわ。その挙句にまた無謀な戦争をはじめて、国土を荒廃させるということにならなければいいですわね。最近の風潮には、いますぐにも中国に戦争をしかけるべきだといった言い方が盛んに喧伝されていますが、それってアメリカの意向を忖度しているようにしか見えない。日本は独立国なのだから、外国の意向に支配されるのではなくて、自主独立の立場から判断すべきだと思いますわ。

無覚先生:まあ、岸田さんは表向きは改憲を強調しているが、内心ではあまり熱心ではないと伝えられてもいる。がむしゃらに改憲にむけて突っ走ることはないのではないでしょうか。

静女史:そうかしら。私は、岸田さんは以外に改憲に熱心だと思っています。だから、岸田政権の時代に改憲が実現する可能性が十分あると思っています。

俄然坊居士:そうして貰わねばならぬのですよ。日本は今まであまりにも能天気できた。特に安全保障の問題では、いまだに多くの事柄がタブー視されている。それでは今後の世界を生きていくことはできない。ウクライナ戦争の教訓は、国際社会には良識は働かず、むきだしの暴力がまかりとおるということです。そのことに日本人は早くめざめ、国力の強化と国民の安全を図って行かねばならぬのです。

無覚先生:議論は尽きませんが、この辺でお開きにするとして、その前に壺齋さんから一言あればどうぞ。

壺齋散人:いや、とくにありません。ですが、一言だけ言わせていただければ、日本は今後当分右寄りに傾いていくだろうという予感がします。その理由を自分なりに解釈していますが、それを話すと長くなりますので、ここでは遠慮しておきます。ああそれと、先ほど俄然坊さんが言っておられた立憲民主党の解体については、小生も十分ありうることと考えます。

無覚先生:それではこれで散会しましょう。コロナがまたぶり返しているようですので、皆さんにはくれぐれも注意されるようおすすめします。






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