核軍縮への期待は幻想か? NTP会議再度決裂

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国連本部で行われていた核不拡散条約(NPT)の再検討会議が、最終文書を採択できず決裂した。前回に続いての再度の決裂である。このことについて、NATO諸国を始めとした西側は、ひとえにロシアの責任だといって非難しているが、それは一方的な言い分だろう。この決裂は、今日世界が陥っている深刻な分裂を反映しているのであり、その分裂の責任は、ひとりロシアのみならず、アメリカをはじめとした西側諸国にもある。

今回非常に不可解に見えたのは、ロシアとともに核軍縮に大きな責任を負っているアメリカが、問題を深刻に受けとめていないように見えたことだ。アメリカは、この問題について、ロシアと直接交渉する姿勢をみせず、責任のすべてを議長に負わせたうえで、自分はほとんど何もしなかったのである。それでは、まとまる話もまとまらないだろう。

アメリカもロシアも、もはや核軍縮への意欲を持っていないように見える、今回のロシア対ウクライナ戦争においては、ロシアによる核使用の脅しが問題となり、しかもその脅しが現実の効果をもった。つまり、色々問題を含んでいたとされる「核抑止」の概念が、一定程度軍実によって裏書されたということである。そういう事態を背景に、米ロを始めとした核保有国が、核軍縮に取り組む意欲をなくしたとしても不自然ではない。

だいたい、核軍縮条約というのは、そもそも現行の核保有国の権利を認めることの上に成り立っている。その権利を核保有国が最大限に行使しようとしたのが、今回の事態を招いた原因であろう。

そんなわけだから、核軍縮という概念は、もはや骨抜き状態にあると言ってよい。核保有国が保有の権利の上に胡坐をかく限り、核軍縮など成り立つはずがないのである。

だからといって、核を野放しにしていいわけではないし、ましてや核の使用をさせてよい道理もない。そのためには、核軍縮などという欺瞞的なやり方ではなく、核禁止に向かって世界の世論を高めていくべきだろう。

日本は、核軍縮には前向きな姿勢を装いながら、核保有国に遠慮して、核禁止には否定的である。その核軍縮への期待が幻想にすぎず、しかも核使用の禁止にも反対するとすれば、世界は核について無政府状態に陥るほかない。そういう状態では、格を保有したがる国が、今後増えていくに違いない。





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