
晩年の萬鉄五郎は、穏やかな雰囲気の肖像画を好んで描くようになる。自身の子供をモデルにしたこともあったためだろう。「少女の像」と題したこの作品は、次女の馨子をモデルにしたもの。馨子は1917年の生まれだから、この絵のポーズをとった1925年には満八歳だった。八歳といえば、幼女と少女の境にある年齢だ。
この絵にはそうした幼女と少女の両面がうかがえる。眼を大きく見開き、唇をキリっと結んだところは大人びた印象に見えるが、しかし不安定さを感じさせる姿勢は、幼女らしい。
寒色と暖色の組み合わせが絶妙だ。鉄五郎は、背景を暖色で塗り、モチーフには寒色と暖色を組み合わせる手法をとっているので、全体として明るくかつ暖かい印象をベースにしながら、モチーフが引き立って見える。この絵の場合、袖の部分の薄紫が強いアクセントになっている。
(1925年 カンバスに油彩 45.5×33.5㎝ 岩手県立美術館)
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