OUT:主婦の殺人

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2002年の映画「OUT](平山秀幸監督)は、桐野夏生の同名の小説を映画化した作品。桐野の原作を小生も読んだが、すさまじい迫力を感じたものだ。その迫力は、主人公雅子のニヒルな生き方から伝わってくるものだ。だから、映画化にあたってはキャスティングが大事だと思うのだが、この映画で雅子を演じた原田美枝子は、無論すぐれた女優には違いないが、雅子を演じる柄ではないようだ。原田の顔は、どちらかというと可憐さを感じさせるほうだし、不幸な女性の哀愁を感じさせもする。ところが原作の雅子は、そういったものとは全く無縁なのだ。

原作最大の読ませどころは、殺人の冤罪をかぶせられた佐竹という男の復讐であり、その佐竹の怒りに正面から向かい、真っ裸にされながらもけなげに戦う雅子の壮絶な生き方なのだ。ところが映画では、そういった要素がほとんど抜けている。佐竹は雅子ではなく、老婆といってよい芳江に殺されるのであるし、しかもかなり間抜けな殺され方である。また、佐竹の復讐は、雅子らの仲間邦子の死体を送り付けることから始まったのだが、映画では十文字という男の切断された右手が送りつけられるということになっている。しかも邦子をはじめ四人とも最後まで生き残るのだ。

そういうわけで、原作の切迫した緊張感はほとんど伝わってこないし、ストーリーもかなり改変されている。原作者の桐野の意向がどうだったのか。聞きたいところだ。

なお、雅子の存在感が相対的に希薄になっているかわりに、倍賞美津子演じる芳江の存在感が大きい。その芳江は原作では、自宅が偶然火災になり、病気の姑が死んでほっとすることになっていたが、この映画の中では、自宅で佐竹を殺したあとで、自ら家に放火するというふうに変えられている。佐竹はいとも簡単に老婆に包丁で刺し殺されてしまうのである。その佐竹を間寛平が演じているが、間には悪党役は基本的に似合わない。根が善人だから、外見上も善人にしか見えないのだ。






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