小城之春:国共内戦時代の中国映画

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国共内戦時代に作られた中国映画「小城之春」(1948)は、中国流のメロドラマである。メロドラマには二種類あって、一つは男女の純愛をすれ違いという形で描いたもの、もう一つは男女の激しい性愛を不倫という形で描いたものである。この「小城之春」は不倫ものに属する。中国映画史では名作の誉れ高く、いまだに上映されているという。

舞台は、対日戦争終了直後の中国の地方都市。対日戦がもっとっも激しかったのは、山東省から河北省にかけてだから、おそらくそのあたりだと思う。八年間にわたる対日戦争で、町は破壊され、主人公の家も荒廃する。この映画は、その荒廃した家を舞台に、主人公の女性とある男との不倫の愛を描いている。

主人公の女性は、中国版ボヴァリー夫人といってよく、無気力な亭主のために、退屈な日々を送っている。そこへ思いかけず、昔愛した男が現れる。女は、なつかしさもあり、また欲求不満にもうながされて、急速にその男を求めるようになる。ところが、夫の若い妹が、その男に惚れ、夫もその男を妹と結ぼうとする。それを知った主人公の女性は、焦りに焦ってどうしたらよいか、判断に迷う、といった内容である。

結局男は去ってゆき、そのことで女性は破滅を逃れる。だが、それによって自分の青春が永遠に失われたと思うのだ。

映画は、国共内戦がもっとも激しかった時につくられたのだが、内戦の影はまったく感じられない。そのかわり八年間にわたる対日戦が、中国人を徹底的に痛めつけたというメッセージが伝わってくる。なにしろ日本軍は町ぐるみ破壊しつくしていったのだ。

タイトルの小城とは、小都市といった意味の言葉。中国の、とくに北部の都市は、だいたいが城壁に囲まれており、この小都市もかつては城壁に囲まれていたのだったが、いまはその城壁は瓦礫の山になっている。その瓦礫の山で、主人公の女と男とは密会をかさねるのだ。






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