チャプスイ:ホッパーの世界

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チャプスイ(Chop suey)とは、アメリカ流中華料理の店。広東出身の中国人が、アメリカで広めた中国料理の名称が、そのまま中国料理全体を代表する名前になった。チャプスイ自体は、肉と野菜をいためてとろみをつけた料理という。

この絵は、そのチャプスイ食堂の内部を描いたもの。店内の空間が大きく描かれ、人物が画面の端に寄っている構図は「オートマット」と同様である。「オートマット」に描かれているのは一人の若い女性であったが、この絵の中には四人の人物が描かれている。手前に互いに向き合った二人の女性、左手奥に男女のカップル。

手前の二人の女性は、くつろいだ姿勢でなにか語り合っているように見える。批評家の中には、この二人が互いを意識せずに、自分の中に閉じこもっているというものがあるが、それはうがちすぎた見方というべきだろう。

奥のカップルのうち、女性のほうは横顔の一部がのぞいているにすぎない。このように人物を、フルサイズで描かず、半身ないし一部だけを描くというのは、ホッパーの特徴の一つである。

とにかく、店の中の空間が強調されており、人物はその空間をもり立てるための小道具のように見える。小道具と言えば、窓の外の看板にも、チャプスイの文字の一部が見えている。

(1929年 カンバスに油彩 81.3×96.5㎝ 個人コレクション)  





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