コロナ感染爆発と「専門家」のメンツ

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コロナの第七波が爆発的な広がりを見せている。連日20万人から30万人の感染が報告され、いまや、世界でもっともひどい状況に陥っている。一時は、世界でもっとも感染が少なく、優等生と言われていた日本が、なぜこんなことになってしまったのか。その疑問に答えてくれそうな見解を、雑誌「世界」の最新号(2022年9月号)で読んだ。

辛口な語り方で日本社会の抱える問題に疑問を投げかけてきた元鳥取県知事片山善博氏の小文「新型コロナ分科会提出資料から読み取るべき重要な課題」と題したものだ。この小文の中で氏は、今般の感染爆発の背景にはウィルスの空気感染の広がりがあり、それに対して政府が適切な情報を国民に知らせていなかったことがあると指摘している。さらにそのことの背景に、政府の「分科会」のスタンスがあると指摘する。というのも、政府の「分科会」は当初からコロナは飛沫感染をつうじて広がるので、空気感染は問題にしなくてよいと言ってきた。そういってきた手前、今回の感染爆発に際しても、空気感染が原因だといえず、ダラダラと感染拡大を許してしまった。

要するに政府の分科会の「専門家」と称する連中が、自分たちのメンツにこだわるあまり、正確な情報を国民に知らせず、感染の拡大を許してしまったというのである。もし氏の言う通りだとしたら、由々しきことと受け取らねばならぬだろう。

国民の命と健康を守るべき責任は、第一義的には政府にある。その政府が、専門家の権威を利用しながら、国民に対して指示をしているわけだが、その場合に、政府と専門家の間に、適切な役割分担が形成されていないことが、このような事態をもたらしている、といえそうである。政府は専門家に対して自分たちの都合のいいような情報を出してほしい。専門家は専門家でそうした政府の意向を忖度する傾向が強い。あまつさえ、政府が自分で責任をとらず、専門家がそれを担うような形になっている。本来は科学的な情報提供に撤するべき立場にある専門家が、半ば政府の仕事を代行しているような事態が生じているわけである。その結果、「専門家」からなる「分科会」は、ただに情報の科学的根拠のみならず、それの政治的な影響にも気をつかわざるを得ない。

こうした事態は、専門家の本来のあり方からはずれたものであり、また、政府は政府で、本来の責任を放棄して、それを専門家に丸投げしている。こうしたゆがんだ構造が、今般のだらしなさすぎる事態をもたらしている。どうも氏は、そう言いたいようである。






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