岸田内閣が「骨太方針」なるものを提示した。目玉は日本的雇用の「改革」である。これまでの雇用の主流だった「終身雇用」とそれを前提とした諸制度を破壊し、アメリカ型のジョブ型雇用に替えようというものだ。日本型雇用は、明治以降の日本の資本主義システムを土台で支えてきたものであるから、それを破壊するというのは、歴史的な挑戦と言えるだろう。
先般は、株価が史上最高水準に近づくほどアップし、世界中の投資家たちを喜ばせた。日本の株式市場は非常に変則的で、政府や企業の都合により動くところがある。今回の株安は、政府の株高政策と並んで、企業による自社株買いなどが要因になったといえる。その背景には株主優先主義の思想がある。企業は、黒字の大半を株主還元する一方、労働分配率の向上にはほとんど関心を示していない。今春、岸田内閣の要請に応じて賃金をあげる動きが表面上はみられたが、結果として実質的な賃金上昇にはなっておらず、むしろ目減りしているほどである。
一方で世界中の株主を喜ばせながら、他方では日本の労働者たちに犠牲を押しつづける、というのが岸田内閣のあいもかわらぬ姿勢である。今回の骨太方針が実行に移されるようなことがあれば、非正規雇用がまずます蔓延し、労働分配率はさらに低下するだろう。その結果日本経済はさらに縮んでいくだろう。
岸田首相の「新しい資本主義」は、世界中の投資家にとって限りなく優しい資本主義であって、日本の労働者庶民を馬鹿にした考えにたっている。こんな政府に日本の国民が怒りの声を上げないのは不思議である。これでは、日本国民はお上に従うのは当たり前と考え、どんな無理難題でもすなおに飲み込む都合のよい生き物だ、と政府にたかをくくられるのも仕方がない。
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