ルーマニア映画「アカーサ僕たちの家」:ブカレストのロマ人一家を描くドキュメンタリー

| コメント(0)
romania21.jpg

2020年のルーマニア映画「アカーサ僕たちの家」は、ブカレストに生きるロマ人一家を描いたドキュメンタリー映画。ドキュメンタリーとはいっても、多少ドラマチックな要素も盛り込んである。そのためかなりな迫力を感じさせる。その迫力は、ルーマニアに暮らすロマ人への差別意識に発するのだと思う。この映画の中のロマ人一家は、文明の名のもとで、ロマ人として生きるに必要な尊厳をはく奪され、ルーマニア人社会への適応を強要されるのである。

ルーマニア人は、この映画の中でも強調されているように、ローマ人の祖先であることに誇りをもっている。日本人にはあまり知られていないが、ルーマニア人は、人種的にも言語的にもラテン系なのである。一方ロマ人は、日本ではジプシーという名で知られている。そのジプシーという言葉は、異民族がかれらにつけた名前で、かれら自身は自分たちをロマと呼んでいる。「人間」という意味だそうだ。ところがルーマニア人には、ジプシーがロマと自称するのは許せないという気持ちがあって、それがルーマニアをロマ人への有力な迫害国にしているようである。この映画に描かれているロマ人一家の運命も、ルーマニア人による迫害と言えなくもない。

舞台は、ブカレストの市街に接する広大な公園。池や川を含む広大な面積の自然公園だというから、おそらくティネレトゥルイ公園だろう。その公園に粗末な小屋がけをして、九人の子どもを含む家族が暮らしている。父親によれば、もう十八年ここで暮しているので、他に移ることは考えられない。ところがそこに、壮大な公園整備計画が持ち上がる。荒れ放題の自然を改造して、近代的な都市型自然公園に改造しようというのだ。ついては、ここに住みついている一家が邪魔になる。そこで市当局はあれこれと細工をして、一家を公園から追いやり、市内のアパートに移住させる。子どもたちはすぐに新しい環境に適応するが、親たちはそうはいかない。ストレスが高まるばかりだ。そんなロマ人の苦悩を画面は追っていくのだが、その先に満足できる解決策が見えるわけでもない。

ルーマニア映画として、ルーマニア人が作った作品としては、ロマ人への気配りが多少なりとも感じられ、それなりの公平さは指摘できる。しかしロマ人に向かって心無い暴言を吐く男が出てきたり、ロマ人の生活ぶりを堕落のように言い募る役人がでてきたり、そこここに根強い差別意識を感じさせもする。なお、どういうわけか、イギリスの当時の皇太子チャールズが出てきて、公園内で植樹を行う儀式が写されている。チャールズはあいかわらず尊大な表情である。





コメントする

アーカイブ