アイリスとリラ:ボナール

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「アイリスとリラ(Iris et lilas)」と題されたこの絵は、ボナールの静物画の代表作の一つ。ボナールは、1910年代の半ばごろからぼちぼち静物画を手掛けるようになった。ボナールの静物画の特徴は、強烈な色彩感である。輪郭はすべて、色彩の差異によって表現される。色彩相互は激しいコントラストを示す場合が多い。

この絵は、寒色主体でまとめられていることもあり、比較的落ち着いたイメージで、強烈な色彩感というより、静寂さのなかの精神性を感じさせる作品だ。その静謐さは、透明な水の表現にもあらわれている。

赤系統の色を全く使っていないのに、全体として色のバランスがとれている。通常静物画を描く場合には、満遍なく色を配しようと画家は努めるものだが、この絵は、少ない色で過剰な表現を演出している。

(1920年 カンバスに油彩 57×63㎝ トゥールーズ、バンベール財団)






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