NHKスペシャル番組「未解決事件」シリーズのFile10「下山事件」を見た。前後二編で構成され、前半はドラマ仕立て、後半はドキュメンタリー仕立てになっている。前半がよくできていた。森山未来演じる検事の布施健が、事件の真相を追い、ついに真犯人を突き止める経緯を描く。真相は、アメリカの占領当局が、国鉄への見せしめとして行ったというものだ。当時日本はアメリカの統治下にあり、アメリカを刑事犯として裁くことはできなかった。しかし、1952年に独立を回復した以後も、日本の検察はアメリカに対して遠慮しつづけた。そのことは検察に後ろめたさを感じさせる要因となり、検察はその意趣晴らしのために後日ロッキード事件を裁いた、というような構成になっている。ロッキード事件を総指揮したのは、下山事件を担当した布施だったので、意趣晴らしというのは非常に説得力のある見方だ。
下山事件は、三鷹事件、松川事件とならんで、国鉄をめぐる三大ミステリー事件と呼ばれた。1949年7月に起きた下山事件がその最初であり、その後、わずか一か月の間に、三鷹・松川両事件が起きた。どの事件も、共産党のかかわりが噂され、三鷹・松川両事件は共産党員が検挙された。下山事件は、共産党の仕業と決めつける前に、自殺か他殺か判断がつかなかったこともあり、事件は迷宮入りへの経緯をたどった。しかし、この番組では、アメリカの仕業と決めつけている。
アメリカの仕業だったということは、後半のドキュメンタリーの部分で丁寧に解明されている。GHQの下部組織で発案し、それを日本人の組織を利用して実現した。その組織とは、旧軍人らを中心に組織されていたもので、児玉誉志夫などもからんでいたらしい。その児玉が布施に向かって事件の背景を説明する場面がある。アメリカが朝鮮戦争のために日本の国鉄を専用できるように下山総裁に持ち掛けたところ、下山がそれを断ったので、見せしめのために殺したというのである。さもありそうな話である。
下山事件は、三鷹・松川両事件と深いかかわりを感じさせるので、下山事件の犯人がアメリカならば、三鷹・松川両事件にもアメリカが絡んでいると思うのは自然の勢いではないか。いずれにしても、NHKはこの件に関しては、よくやったと思う。
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