三宅唄「きみの鳥はうたえる」 若い男女の奇妙な三角関係

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三宅唄の2018年の映画「きみの鳥はうたえる」は、若い男女の奇妙な三角関係を通じて、現代日本社会における若者の生きざまを描いた作品。本屋に働く男女がまず結びつく。男にはルームシェアする友人がいて、その友人も女に関心を示す。そのうち女は友人とできてしまう。その女は以前、勤め先の本屋の店長ともできていたので、その尻の軽さが際立って見える、といった内容の映画である。

若者らがいとも簡単にくっついたり離れたりするところに、今どきの若者気質を感じる。だが、今どきの若者はなかなかまともな恋のチャンスがないともいえる。だから、身近に異性がいて、くっつける可能性があると、くっつきたがる。そのあげく、この映画の中の男女のように、見苦しい三角関係が生じたりする。この映画の中の男女は、二人の男が一人の女を共有しているようにも見えるし。一人の女が二人の男を所有しているようにも見える。

主人公の男を江本拓が演じ、その恋人を石橋静河が演じている。石橋は前年「夜空はいつでも最高密度の青空だ」で、看護婦をやりながらガールズバーの接待ガールをこなすタフな女性を演じていたが、この映画の中では、積極的に男と遊ぶドライな女を演じている。相手の男に金がないと、小遣いを与えたりする。その小遣いの原資は働き先の上司なのだ。その上司と結婚するつもりはない。若い男と遊んでいる方が楽しいのだ。

劇的な展開はまったくない。若者たちが三角関係を結びながらだらだらと遊び続けるシーンがうつされるだけだ。三角関係のもう一点は染谷将太演じる若者で、石橋演じる女は結局染谷とくっつくのである。だが、江本演じる若者は、女を寝取られても憤慨したりはしない。かれには他人を束縛する気持ちはなく、したがって嫉妬することもないのだ。

今どきの若者たちの淡白な生き方がよく伝わってくる作品である。





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