ガザ攻撃はシオニズムに一貫した民族浄化政策である

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岩波の雑誌「世界」の最新号(2024年5月号)が、「ガザ攻撃はシオニズムに一貫した民族浄化政策である」と題する小論(早尾貴紀著)を掲載している。この攻撃を西側諸国の主要な論調は、ハマスのテロへの反撃であり、イスラエル国家の自衛権の発動だとしながら、ちょっとやりすぎかもしれない、というふうに論じている。それに対してこの小論は、イスラエル国家によるパレスチナへの暴力支配の歴史に言及し、ハマスの攻撃はテロなどではなく、イスラエル国家の暴力支配に対する抵抗だと位置づける。そのうえで、イスラエルによるパレスチナ人への大量虐殺すなわちジェノサイドを強く批判する。

イスラエルのパレスチナ人へのジェノサイドは、シオニズムの必然的な結果だというのがこの小論の基調認識である。シオニズムは当初から、パレスチナにユダヤ人だけの国家をつくることをめざしていた。パレスチナ人と平和共存するつもりはなかった。そのイスラエルを英仏はじめ欧米諸国が後押しした。植民地主義国としての都合による。その結果、イスラエルは現地にいたパレスチナ人を虐殺あるいは難民化させし、その後も暴力を振るい続けてきた。ガザに対してだけでも、数度にわたり虐殺を伴う侵攻を行ってきた。今回はその虐殺の仕上げということができる。

シオニズムの本質はセトラー・コロニアリズム(入植植民地主義)である。それはヨーロッパ発の人種主義と植民地主義の結合体であると著者はいう。シオニズムは当初からパレスチナ人の抹消をもくろんでいたのであり、今回の攻撃は、そうした欲望のあらわれである。かれらによるジェノサイドは何ら驚くべきことではないというのだ。

パレスチナ問題の解決策として、オスロ合意の復活が議論されているが、この合意は欺瞞的だと著者はいう。この合意の意味するのは、パレスチナ人にイスラエルへの抵抗をやめさせることを条件に、限定的な行政権を与えるにすぎず、入植地の返還や東エルサレムの返還といった課題は棚上げされた。それでもイスラエルは、この合意を反故にして、入植地の拡大とパレスチナ人への暴力行使を続けている。この合意には日本政府も賛成しているから、日本は今回のジェノサイドを他人事のようにみなすことはできないはずだ。

アメリカや西側の大国は、基本的にはイスラエル贔屓である。ただ,いまの世界世論はジェノサイドには敏感なので、人権を配慮しているふりはしている。バイデンなどは、人権の味方のような振る舞い方である。その一方で、パレスチナ人の虐殺に使われる凶器を供与してきたのである。

この著者のような議論は、これまではなかなか広まらなかった。それをいいことに、イスラエルは暴力をふるい続けてきた。そうしないと自分らの支配が万全にならないからである。そんな暴力国家に好きなように振舞わせてはならない。






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