NHKの定例番組「映像の世紀バタフライエフェクト」が、伝説のジャズシンガー、ビリー・・ホリデイの歌った曲「奇妙な果実」を放送したのを見た(5月13日)。小生はビリーの大ファンなので、是非もなく見た次第だが、番組はビリー自身にではなく、この曲のほうに焦点を合わせていた。この曲はユダヤ人が作ったものだが、ビリーが歌って広めさせた。というか、ビリー・ホリデイという歌手をそのままを感じさせる曲なのである。
奇妙な果実とは、白人にリンチされて、木に吊るされた黒人の遺体のことである。黒人へのリンチは、1950年代まで、南部の諸州では珍しいことではなかった。リンチで吊るされた黒人の写真がブロマイドのように販売されてもいた。アメリカというところは、つい最近までケダモノのような連中が跋扈する野蛮な社会だったのである。
その野蛮な社会にあって、ビリー自身も強姦はじめさまざまな迫害を受けた。ビリーの歌声には、そうした迫害への抗議が込められている。それを忘れてはならない。なお、この曲の歌詞を、拙訳で紹介したい。
南部の木には変わった実がなる
葉には血、根にも血
黒い実が南の風に吹かれて揺れる
ポプラの枝にぶら下がった黒い果実
南国ののどかな景色
飛び出た目とゆがんだ口
甘く強烈な木蓮の香り
熟した実の饐えた匂い
カラスが来て実をついばむ
雨は滴り、風は舐める
実は腐って木から落ちる
風変わりな苦い果実
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