パオロ・ウッチェッロ:ルネサンス美術

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パオロ・ウッチェッロ(Paolo Uccello 1397-1475)は、ルネサンス時代の芸術家のなかでは変わり種である。生前は高い評価を受けていたが、ルネサンス後一旦評価が下がり、20世紀になって再び高い評価が復活した。そのわけは、同時代の他の画家のように、リアリズムを徹底したわけではなく、幻想的ともいえる、非リアルな画風のためだった。

ウッチェッロは、ブルネレスキの好敵手だったロレンツォ・ギベルティに弟子入りしたが、画風上ではブルネレスキの影響を受けている。その影響は遠近法を重視することにあらわれた。実際かれほど意識的に遠近法を追求した画家は他にいなかった。その遠近法を駆使して、非リアルな絵を描くわけだから、そこに独特のミスマッチがうまれる。そのミスマッチぶりが、ウッチェッロの評価に微妙に働くわけである。

ウッチェッロは、フィレンツェを中心に活躍し、ヴェネツィアやパドヴァにも出向いた。彼の仕事の多くは、教会の装飾用作品である。

代表作は「サン・ロマーノの戦い」。これは三つのパネルからなっているが、現在では別々のところで所蔵されている。モチーフになったサン・ロマーノの戦いとは、1432年にフィレンツがシェーナとその連合軍に勝った戦いのこと。聖書に題材をとった作品が普通の時代に、このように同時代の出来事を描くというのは、非常に珍しいことだった。

上は、三つのパネルのうち、ロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵するもの。傭兵隊長ニッコロ・ダ・トレンティーノが友軍に突進を命じているところを描く。一見してわかるとおり、人物は人形のようであり、馬は木でできた細工のようである。だから観客は、まるで御伽噺の世界を見ているような気にさせられる。(1438年頃、181×320㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー)

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これは、フィレンツェのウフィチ美術館所蔵のもの。敵味方相乱れての戦いの様子が描かれているが、やはりおもちゃのような馬がところ狭しと動き回っている。

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これは、女性の肖像。晩年の作品である。この作品にも、リアルな人物表現ではなく、装飾的な雰囲気が窺われる。その装飾性は、衣装の色の鮮やかさに際だって見える。(1450年代、ニューヨーク、メトロポリタン美術館)






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