AIがよみがえらせた美空ひばり

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美空ひばりが死んで30年になるそうだ。そのひばりを小生はこよなく愛しているが、それは母親の影響だった。小生の母親はひばりの大ファンで、食事の時間も惜しんでひばりの歌を聞いていたものだった。ひばりの歌を聞くときの母親の顔は仕合せそのものだった。その母親の顔を見るのが好きで小生は、ひばりのことも好きになったというわけである。そのひばりを、AIの技術を使って今に蘇らせようというプロジェクトが進んでいて、その成果をNHKが披露するというので、小生は胸を高らせながらテレビ画面に見入ったのだった。

プロジェクトはNHKが主導して、一年間かけてひばりを三次元空間で蘇らせる技術を追求したそうだ。AIを駆使して、ひばりの声や、表情や、身振りを忠実に再現し、それを3D技術を用いて舞台に再現するというものだ。一番苦労したのはひばりの歌い方の再現だったそうだが、なかでも今回は新曲を歌わせようというので、ひとしおむつかしかったそうだ。それでもわずか一年間で、満足すべき成果を上げられたのは、AI技術が進んでいて、いまや自己学習できるまでの段階になったからだ。一々人間が介入しなくとも、AIが自分で判断して、学習を深めるということらしい。

そんなこともあって、テレビ画面は3D技術を用いて舞台に再現されたひばりが、「あれから」というタイトルの新曲を歌う場面を映し出した。ややぎこちないところもあるが、歌そのものはひばりの雰囲気がよく出ていた。その場でモニターとして参加した人々のなかには、プロジェクトのスタッフのほか、ごく普通のひばりファンもいたのだったが、彼女らみな一様に感極まった表情をしていた。よほど感動したのだろう。もし小生の母親もそこにいたら、やはり感動したにちがいない。小生は母親にも見せてあげたかったと思いながら、自分自身AIひばりの歌を堪能したのだった。

ところで、AI技術の自己学習については、あのホーキング博士も警鐘をならしていて、人類はやがてAIとの間で深刻な問題に直面するだろうといっていた。AIの自己学習がある段階に達すると、AIは自分自身のためにプログラミングするようになり、人間から完全に自立するようになる可能性が高い。そうなった場合、AIはほぼ無限に近い可能性を獲得するだろう。進化も加速するに違いない。人間には進化上自然の制約があるのに、AIにはそうしたものはない。だからスーパーマンのようなモンスターに進化する可能性は高い。そうした能力をもったAIが、かりに人類と敵対関係になった場合、人類が勝つ見込みはほとんどない、とホーキング博士はいっていた。

そういう予言が実現しないことを祈りながら、小生はひばりの歌に聞きほれた次第だった。





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