一葉女史の墓:鏑木清方

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鏑木清方は樋口一葉をモチーフにした絵をいくつか描いている。18歳の時に読んだ「たけくらべ」に感動して以来、一葉に読みふけったようだ。この絵は、一葉女史その人ではなく、彼女の墓をモチーフにしている。その墓に抱き着くようにして寄り添う一人の女は、「たけくらべ」の主人公美登利だという。

この墓は樋口家の墓で、築地本願寺の墓地にあったと清方自身が書いているのは、無論そこを訪ねたことがあるからだろう。その墓に、自分の家から持参した作り花を持っていって差した。この作り花は、「たけくらべ」の中に出て来る水仙の造花をイメージしたというが、絵を見る限り、水仙ではなく椿のようである。

美登利のモデルは、友人山岸荷葉の妻りう女。実際このようなポーズをとらせたのだろうが、まさか墓を抱かせられるとは、意外だったに違いない。なお、清方は、「今日の私にあるものは、ほとんどこの一枚にみんな含まれているのではないか」と「画心録」の中で書いているから、よほどこだわりがあったのだと思われる。

(1902年 絹本着色 133.0×70.5㎝ 鎌倉市)






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