唐獅子図:曽我蕭白の世界

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「唐獅子図」は、伊勢松阪の朝田寺に伝わってきた作品。双幅の墨画で、本堂内の本尊の両側の壁に貼り付けられていた。ということは、寺ではこの作品を、あかたも西洋の宗教画のように、本尊の引き立て役として重宝してきたということだろう。

朝田寺の本尊は地蔵菩薩で、平安時代に作られたという。重文の指定を受けている。寺自体は天台宗で、延暦寺の末寺である。そこの壁画としてこの絵の注文を受けたわけだ。おそらく蕭白の名声が伊勢地方に広がっていたのであろう。

宗教画としては、非常に荒々しい印象を与える。右側が阿形の獅子、左側が吽形の獅子だが、これは寺院入口の石獅子の阿吽一対を平面的に表現したものといえる。

上は、阿形の獅子。岩にもたれかかって背後を振り返っているが、その口は大きく開かれ、視線は吽形の獅子のほうへ向けられている。落款には「平安蕭白画」とある。

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これは、吽形の獅子。目をむき出してこちらを見ているところは、あたかも威嚇しているように見える。阿形ともども、筆致は非常に荒々しい。これは酔って描いたからだという説もある。なお、こちらの落款には「皇園散人曽我暉雄画」とある。平安も皇園も京都を意味する。自分は京都から来た大物だといっているようである。

(1764年頃 紙本墨画 双幅 各224.6×246.0cm 松阪朝田寺 重文)







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