梅華図双幅:富岡鉄斎

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鉄斎の梅華図双幅は、右隻が「寒月照梅華図」、左隻が「梅華満開夜図」という。どちらも梅花をモチーフにしたもので、右隻は専ら墨で描き、左隻は墨を基調にして、抑え気味の色彩を施している。墨は実に表情に富んでおり、まるで多くの顔料が混ざり合ったかのような、ある種の色彩感を感じさせる。

まず、右隻。これは大きな満月を背景にして、開花した梅を描いたものである。背景の夜空をやや暗い色調の墨で塗り、梅の枝は濃い墨で表現している。枝に開いた花の部分は、白抜きだと思われる。舞い散っているほうの花びらは胡粉であろう。賛には、題名の「寒月照梅華」が記されている。

ついで、左隻。これは墨を貴重にして、背後の岩山や手前の渓流沿いの岩を緑青で彩色し、ところどころ辰砂を薄くのばして施し、そのことで画面に独特の艶を生み出している。こちらは左上に賛があり、やはり題名の「梅華満開夜」と記されている。

左右双幅を並べて見ると、強烈な色気のようなものを感じるが、墨画でこのような色気をもった作品は、そう多くはない。鉄斎の一つの到達点ではないか。

(1911年 紙本墨画 双幅 各149.7×40.6cm 大和文華館)





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