ミレー「スープ」:バルビゾン派の画家たち

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ミレーは、1860年に画商ステヴァンスと契約を結び、絵も売れるようになって、ようやく生活が安定してきた。だが、画風は以前どおりで、農民の暮らしぶりや田園の風景を描き続けた。金持ちの肖像を描くようなことはしなかった。

この「スープ(Femme faisant manger son enfant <La bouillie>)」と題した作品は、あいかわらず農民の暮らしぶりに向けるミレーの暖かい視線を感じさせる作品である。子どもを膝のうえに抱えた母親が、その子に飲ませるためのスープを、息を吹きかけながらさましている。日常よく見にする眺めであるが、それをこのような形で描いた画家はほかにはいないだろう。

従来の母子像といえば、聖母とキリストをイメージしたものが殆どだった。ミレーはこの絵の中に、聖母に劣らないほどの、母性の尊さを描きこんだのであろう。なお、この絵の構図はエッチングにもなって、広く流通した。

(1861年 カンバスに油彩 116×100cm マルセーユ美術館)





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