
「前赤壁図」は、北宋の大詩人蘇軾の有名な「前赤壁賦」をイメージ化したもの。鉄斎は蘇軾を敬愛しており、数多くの肖像画を描いているが、これは蘇軾の代表作を題材にしたもの。賛がわりに、賦の文章を全文記している。
赤壁は、長江の中流域にある。そのあたりの長江の川幅はキロ単位の長さだが、この絵の中では、かなりせばめられている。そうすることで、構図をまとめようと考えたのだろう。
画面手前が川岸で、そこに数人の人物が立っている。また、岸辺に船がつながれているが、その舟にこれから乗るところなのであろう。遠くに見える月は夕日だろうから、手前は下流ということになる。
この年、友人たちが宇治川で赤壁雅会を催した。鉄斎はそれにこの作品を寄せたという。なお、同じ年の暮れに、「後赤壁図」を作成し、一対とした。
(1922年 紙本着色 155.2×43.0cm 清荒神清澄寺)
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