世代:アンジェイ・ワイダのレジスタンス映画

| コメント(0)
poland31.gene.jpeg

1954年のポーランド映画「世代」は、アンジェイ・ワイダの監督としてのデビュー作。第二次大戦中ナチスの占領下におかれたワルシャワで、レジスタンス運動に身をささげる若者たちを描いている。対ナチス・レジスタンスを中心にしたポーランド現代史は、以後「地下水道」、「灰とダイアモンド」でも取り上げられ、この三作を「抵抗三部作」と称している。

ドイツ軍の兵たん活動を妨害していた三人の若者が、石炭を運ぶ列車から石炭を盗み取る場面から映画は始まる。運悪く機関士に発見され、仲間の一人が死ぬ。生き延びたうちの一人スタフが、以後映画の主人公となって画面が展開する。筋書きを簡単にいうと、スタフが仕事を与えられた工場で、新しい友達を作る一方、マルクス主義者から労働者の解放の理念を吹き込まれたりする、というような内容だ。

スタフは夜間学校で学んでいるが、そこで対ナチ・レジスタンス運動を呼び掛ける女性ドロタと知り合う。ドロタの影響を受けたスタフは、レジスタンス運動にのめり込んでいく。やがて、ワルシャワのユダヤ人ゲットーで蜂起の動きがあると、スタフやその仲間たちも応援にかけつける。しかしナチスの強力な武力の前では手も足も出ない。仲間の一人はナチスに追い詰められて自殺し、スタフは、ひどい暴行を受けたりする。

レジスタンス運動は厳しい試練に直面し、メンバーは地下に潜らざるをえなくなる。そんな中、ドロタはナチスに連行される。残されたスタフは単身地下メンバーに連絡をとり、ひきつづきポーランド解放のために戦い続ける決意をする、というような展開になっている。

アンジェイ・ワイダは後にポーランドの社会主義体制に批判的な姿勢をとるようになるが、当初は対ナチスのレジスタンス運動を取り上げていた。対ナチ・レジスタンスはポーランド国民にとって共通の大義なので、それを描いている間は、ワイダもポーランド政府から認められていたわけである。

タイトルにある「世代」とは、ナチスの支配に直面した世代という意味であり、その世代にとっては、レジスタンスこそが共通の大義だったということを言いたいのであろう。そうしたレジスタンスに身をささげたポーランド人が、街路に吊るされる場面がある。人々はじっと吊るされた者たちを見つめている。いくら見せしめとはいえ、そんなことをすれば、被占領者の恐怖心をそそるよりも、ナチスへの反感を高めるばかりだということを、当時のドイツ人はわかっていなかったようだ。






コメントする

アーカイブ