アメリカが対ロ宣戦したら日本も参戦するのか:集団的自衛権の試練

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プーチンのウクライナ侵攻という事態を受けて、アメリカはウクライナ側に立って、ロシア包囲網を呼びかけているが、いまのところは、経済政策に踏みとどまり軍事的オプションは考えていないようだ。しかしアメリカという国にはわからないところがあって、国民の一時的熱狂が、大統領に対ロ宣戦を決断させないとも限らない。そうなった場合、日本も対ロ参戦を強いられる可能性がある。日本は果たしてどうすべきか。

こんなことを考えるのも、安倍政権によって集団的自衛権が法制化され、日本はアメリカの対ロ戦争に参加できる法的根拠をもつようになったからである。日本は戦後一貫して、自衛権の行使に慎重だった。憲法上の制約があるし、歴代の政権も自重してきたからだ。自衛権が行使できる場合があるとして、それは厳格に制限され、いわゆる専守防衛に専念するという建前を貫いてきた。ところが安倍政権は、そうした従来の姿勢を大転換させ、集団的自衛権を行使できるよう法整備した(いわゆる安保法制)。

法整備はしたものの、その具体的な運用をどうするかについては、ほとんど何も議論されていない。野党が、集団的自衛権を導入した安保法制自体が違憲であることを理由に、その具体的な運用について議論することをタブー視していることもある。しかし、そういう状態で、事実が先行し、日本が集団的自衛権の発動を迫られたときどうすべきか。具体的な運用政策がほとんどない状態では、なしくずしに参戦することになりかねない。

もともと安倍政権が集団的自衛権の導入に踏み切ったのは、中国および北朝鮮を念頭においてのことだった。たとえば台湾危機の時に、日本としてアメリカと共同して対中戦争に踏み切る、ということを想定していたのだろう。今回のウクライナ危機は、ロシアが引き起こしたものであるが、安倍政権は対ロ関係で、集団的自衛権を行使するとは夢にも考えていなかったと思う。

ところが、その対ロ政策で、集団的自衛権を発動する可能性が否定できないのだ。そうなった場合、日本としてどうするのか、十分に考える必要がある。

対ロ参戦が絶対無理筋の話だとは小生も考えない。ロシアとは、日本はいまだに平和条約を結んでいないし、事実上、領土の一部を占領されている。占領された領土は戦争の結果取られたのであるが、力で取られたものは、力で取り戻すというのが国際関係の定石である。もし日本が本気で領土を取り戻したいのであれば、ここで対ロ戦争を始め、ロシアを敗北に追い込んだうえで、戦勝国の一員として、領土を返還させるという選択肢が考えられないでもない。

だが下手に対ロ参戦すると、東京が核攻撃にさらされないとも限らない。そうさせないように振舞いながら、ロシアを敗北に追い込むことは、それはそれで至難の業ではある。





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