ジスモンダ:ミュシャの世界

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ミュシャが、サラ・ベルナールの依頼を受けて作った劇場公演用のポスター「ジスモンダ」は、ミュシャの出世作となった。それについては、伝説となったいわくがある。

1894年のクリスマスの夕方に、当時有名な女優だったサラ・ベルナールの一座から、正月公演用のポスター作成の依頼がミュシャの所属していた美術工房に寄せられた。その時には、他の職人たちがみなクリスマス休暇をとっていて、ミュシャ一人だけがフリーだったので、かれに作成がゆだねられた。その時のミュシャは全く無名だったが、このポスターが成功したことによって、一躍画家としての名声を確立したというものだ。

実際の所、ミュシャはある程度名を知られていたし、また、自分なりのスタイルを確立していた。サラから依頼されたポスターは、そんな自分の実力をためすいい機会になった。

当時のサラは、すでに全盛期を過ぎてはいたが、女優としての名声はヨーロッパじゅうに轟いていた。そんなサラにミュシャは、大いに気に入られた。以後数年間、ミュシャはサラの公演ポスターを次々と手がけ、また衣装などの舞台効果にも協力するようになった。だからサラ・ベルナールはミュシャにとって恩人といってもよかった。

この作品は、舞台の女主人公ジスモンダに扮したサラ・ベルナールの姿を、神々しいイメージで定着したものである。サラはまるで女神のように見える。それには、ミュシャ独特の美意識が働いている。当時のポスターといえば、ロートレックなど、原色を多用したケバケバしいイメージのものが多かったのだが、このポスターは、中間色を多用し、また花など装飾的なイメージを最大限活用している。後にミュシャ流のアール・ヌーヴォーといわれるものの要素が揃っているのである。

(1894年 紙にリトグラフ 216.0×74.2cm) 





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