筆立のある静物:萬鉄五郎の静物画

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「筆立のある静物」と呼ばれるこの絵は、東京へ戻ってから制作されたものだが、土澤時代の「手袋のある静物」の延長上の作品である。色彩は非常に暗く単調で、構図にはキュビズムの影響を指摘できる。

色彩についていうと、「手袋のある静物」よりはいくらか明るみを増し、また、抑え気味とはいえ好きな赤系統を使って、それが地味なグリーンと補色の効果を醸し出しているために、全体として、「手袋」よりは明るく見える。

構図については、複数の視点を組み合わせるなど、キュビズムの理論を意識したものになっている。具体的には、斜上からの視点と、真上からの視点とを、同じ画面に共存させることで、二次元の平面に三次元の立体感を再現しようとする。

この作品は、1917年の「第四回二科展」に、「もたれたつ人」とともに出展された。「もたれたつ人」は評判になったが、この作品はほとんど注目されなかった。地味すぎたせいであろう。

(1917年 カンバスに油彩 68.0×57.5㎝ 岩手県立博物館)






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