不都合な真実:アル・ゴアの地球環境保護運動を紹介するドキュメンタリー

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2006年のアメリカ映画「不都合な真実(An Inconvenient Truth デイヴィス・グッゲンハイム監督)」は、地球温暖化防止を訴えるアル・ゴアの活動を描いたドキュメンタリー作品。アル・ゴアが、世界各地を飛び歩いて行っているキャンペーン講演の様子を映し出しながら、アル・ゴア本人の私生活も懐古的に語られる。

アル・ゴアといえば、クリントン政権の副大統領をつとめ、2000年の大統領選では息子ブッシュに僅差で敗れた。若い頃から環境問題、とくに地球温暖化問題に強い関心を持ち、大統領選に敗れた後は、もっぱら地球温暖化防止のキャンペーンに余生をささげた。その功績が認められて、2007年にノーベル平和賞を貰っている。それにはこのドキュメンタリー映画も一定の役割を果たしたようだ。この映画は又、共和党でさえ、地球温暖化問題にまともに取り組まざるを得ないような世論を喚起した。オバマが2008年の大統領選挙に勝ったことのひとつの要因は、この映画が訴えた環境問題に世論が共感したことだと指摘できる。

映画は、ほとんどの部分を、アル・ゴア本人が大勢の人びとを相手に、壇上から語り掛けるところを写す。話の内容は、地球温暖化についての科学的な説明と、それをストップさせることの緊急性についての訴えである。ゴアにはかなりなユーモア感覚があるようで、たくみな比喩を駆使しながら人々の心をつかんでいく様子を、臨場感をもって映画は描き出している。しかし、かれの説を率直に解釈すれば、地球温暖化の基本的な原因は人類の数が爆発的に増加したことだというふうに伝わってくる。ゴアが生まれた大戦直後には20億に満たなかった地球人口が、かれが死ぬ頃には90億人になると見込まれている。過去数千年かけてやっと20億人に達した人口の増加を、わずか一世代のうちに、その数倍もの規模で拡大させたわけだから、地球環境に巨大な影響が出るのはあたりまえということになろう。実際ゴアも、人間の数が爆発的に増えたことが、地球温暖化の根本原因だと認めている。

もしそういう前提に立つなら、地球温暖化を抜本的に防止するためには、人間の絶対数を減らすほか道はないということになってしまう。だが、人間の絶対数を劇的に減らす方法は、核戦争で人類の大部分が死滅するというような事態の他には考えられないから、地球はやがて決定的な崩壊に直面するのだろうというような諦観を、この映画は観客に迫るところがある。そういう点では、憂鬱な雰囲気の映画である。

もっひとつ、アル・ゴアのやや高慢らしく見える姿勢が反発をかうかもしれない。高い壇上から語りかけていることもあって、彼の語り方には上から目線が強く感じられる。その上から目線で、政敵(息子ブッシュたち)を愚かな人間と決めつける。たしかにかれの政敵には愚かな人間が多かったが、それをことさらあげつらうのも大人げないような気がする。






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