アホタワケが日本をおかしくした:黒田日銀の功罪を検証するNHK番組

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黒田日銀総裁が引退するのにあわせて、NHKがいわゆる黒田日銀の功罪を検証する特集番組を放映した。それを見た小生は、黒田日銀はアホタワケのたぐいだったとの印象を強く抱いた。そのアホタワケが日本をおかしくしたわけで、その罪は大きい。小生がなぜ「アホタワケ」などという過激な言葉を使うかというと、それもNHKに挑発されてのことである。この検証番組の直前には、大河ドラマ「どうする家康」が放送されていたのだったが、そこで家康は信長に向かって「アホタワケ」と罵っていたのだった。信長が自分の置かれている状況を全く理解せず、味方を危地に陥れているのをたしなめたのだ。

黒田日銀総裁は、引退会見の中でも、自分の間違いを認めなかった。それどころか、今般の異常な物価上昇を引き合いに出して、日本はデフレから脱却したかのようにいい、それを自分の功績にする始末である。今般の異常な物価上昇が、国際情勢に起因していることは中学生でも知っており、それを自分の功績のように言い募る黒田総裁が、事態を全く理解していないことは、小学生の目にも明らかだろう。この十年間の黒田日銀の政策は失敗したのであって、どうひいき目にみても、いいことはほとんどなく、悪いことばかり重なった。そのため、日本の金融システムは破綻し、実体経済も停滞したままだ。黒田日銀のやったことは、失われた二十年に、更にひどく損なわれた十年を重ねただけである。

黒田日銀の政策が古臭いマネタリズムに立脚していることは明らかだ。その理屈を簡単にいうと、人為的にインフレを起こすことで、経済を活性化させようとするものだ。インフレを起こすには、貨幣をジャブジャブ垂れ流すのが手っ取り早いやり方だといって、黒田日銀はあらゆる手段を使って貨幣の供給量を膨張させた。その結果は、期待されたインフレもおこらず、経済成長も起らず、金融秩序が乱れに乱れて、日本はもはやまともな資本主義とは無縁な国になってしまった。つまり完全におかしくなってしまったのである。

インフレは経済が活性化した結果起こる現象である。経済が活性すると、賃金も物価も上昇する。あくまでも実体経済が原因であって、インフレやデフレといった貨幣変動の現象はその結果である。貨幣は実体経済を反映しているのであって、貨幣が実体経済を動かすわけではない。ところが黒田日銀が飛びついた古臭いマネタリズムは、原因と結果を取り違える。原因があって結果がおきるのではなく、結果が原因を動かすというふうに、倒錯的な考え方をするのである。なにしろこの連中は、インフレにしさえすれば、経済が活性化するという言説を馬鹿の一つ覚えのように繰り返すばかりで、事態を冷静に見る目をまったく持っていないといわざるをえない。

問題は、十年かかって疑いようもなく明らかになったこと、つまり金融政策で実体経済をコントロールするのは不可能だということを、黒田日銀のメンバーがまだ気づいていないということだ。日銀の審議委員の中には、黒田日銀路線の破綻に気づいていたものもあったように、この番組は描いていたが、総体としては、黒田総裁を前面にたて、有害無益な政策の遂行に邁進してきたといわざるを得ない。小生は、黒田総裁が引退会見の席上で薄笑いを浮かべているのを見て、この男は自分のやっていることの意味が分かっていないばかりでなく、自分こそはお山の大将であり、自分のいうことは至上の真実だと思い込んでいるようである。小生はそこにある種の狂気を感じたものだ。

それでも日本経済が大破綻を起こす予兆は今のところない。不思議といえば不思議なことである。それはおそらく過去の遺産をいまだに食いつぶしていられるからだろうと思う。その遺産はほとんどが金融資産からなっていると思われるが、その価値は国際金融システムによって担保されている。だから国際金融システムが破綻するような事態が起こると(起こる可能性は大いにある)、実体経済が脆弱な日本は、一気に没落の憂き目をみることになる可能性が高い。

ともあれ、新しい総裁の下で、日銀は大規模な軌道修正を迫られるだろう。だが一気に舵を切り替えると、それによる衝撃がすさまじいものになるのは避けられない。政府は利払いの急上昇で予算を組むのにも苦労するだろうし、また住宅ローンを組んでいる人への影響も深刻になり、不動産市場は大混乱に陥るだろう。そんなわけで、新たな体制は、試行錯誤しながら徐々に軌道修正を図っていくことにならざるをえないだろう。

この失われた十年は、アベノミクスの賜物である。黒田日銀はアベノミクスの事実上の推進部隊として、日本を誤った方向に導いてきたのである。日本という国は、一政治家の意向で振り回されるほど、やわな国民性に乗っかっている。そういわざるを得ないのは、一日本人として不幸なことである。

なお、黒田日銀の政策を詳細に批判したものとして、服部茂幸の「偽りの経済政策」(岩波新書)がある。すべてに賛成できるわけではないが、大本は当たっていると考える。一読を勧めたい。





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