バイデンをパスして対中パイプ作りにはげむ米巨大企業

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このところ、米巨大企業の幹部が中国との緊密なパイプ作りに動き出している。モルガン・チェースのCEOジェームズ・ダイモンが中国を訪問し投資銀行の対中進出に意欲を示したのをはじめ、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツやテスラの創業者イーロン・マスクが相次いで中国を訪問し、対中ビジネスの拡大に意欲を示した。バイデン政府が中国封じ込め路線を追求しているなかで、こうした動きはバイデンをパスして、直接自分自身の利益を追求しようというもので、それ自体は資本の論理にかなっている。資本主義国アメリカでは、こうした個別資本の動きを、政府の都合ではとめられないと見える。正式に戦争状態にあるのならともかく、いくら政府の方針に反するからといって、資本の動きを一方的に制約するのはむつかしいのだろう。

こうしたバイデンをパスするような動きがある一方、バイデンの言うことに従った結果巨大な損害に直面している企業がある。バイデン政権の対中半導体輸出規制に加わったマイクロンがその代表的なものだ。マイクロンは、バイデンに言われて半導体の製造装置の対中輸出を中止したのだったが、中国側はそれに対抗して、マイクロン製品の完全禁輸で応じた。マイクロンは、半導体の製品を大量に中国に輸出していたので、それが禁輸になることは、大打撃である。そもそもマイクロンは、バイデン政権の政策に懐疑的で、仮に自社が対中輸出を中止しても、第三の国の企業がその穴を埋めるだけだといっていたものだが、それにとどまらず、自社製品が中国市場から完全に締め出されることになったわけで、バイデン政権に対しては、一体どうしてくれるんだと言いたいところだろう。

マイクロンの苦境に関しては、さすがのバイデン政権もわかっているらしく、マイクロンの抜けた穴を他国(日本や韓国)の企業が埋めることのないようにと圧力めいた動きを見せたものだ。だがいづれマイクロンの穴は、日本や韓国の企業でなければ、ドイツやフランスの企業が埋めることになるだろう。ドイツやフランスにはそれぞれ国益意識があり、バイデンの言うことに全面的に従うとは思えない。

こうした事情が今回のブリンケンの中国訪問の背景として働いているのではないか。今回の訪問はあまりにも突然のことで、しかもアメリカの要請に対して中国が応えるといった体裁をとった。ブリンケンはなりふり構わず習近平との会談を求めたようで、その結果儀礼上かなり不釣り合いな処遇を受けた。通常なら習近平と向き合うのが儀礼上の慣例と言えるが、習近平は一段と高い位置からブリンケンに説教を垂れるような行動をとった。自分自身説教を垂れることが好きなブリンケンとしては、このように自分が説教される立場に追いやられたことは、かなり屈辱的だったに違いない。





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