2006年の中国映画「天安門、恋人たち(颐和园 婁燁監督」は、中国人女子大生の奔放な性遍歴を描いた作品。邦題に「天安門」とあり、また時代背景が1989年前後に設定されているので、例の天安門事件をテーマにしているかと思ったら、そうではなく、中国の大学生たちの糜爛した性関係を描いている。原題の「颐和园」は、そうした性関係の舞台の一つなのである。「颐和园」には小生も、観光ツアーで訪れたことがあるが、北京西北部にある巨大な庭園である。
中朝国境地帯の町図門に暮していた女子が、北京の大学に合格して、学生生活を堪能することになる。この女子は、性欲が旺盛で、大学入学前にも、近所の男友達と、野原でセックスを楽しむ。そんな風だから、北京に出てきて、大勢の男子学生と接すると、誰彼となくセックスを楽しむ。気にいった男子はいるのだが、その男だけでは満足できないようで、他の男にも手を出す。そんな女子学生に愛想をつかした男子は、彼女から去る。
学生生活に飽きたきた女子は、故郷の図門にもどるが、そこでも、色々な男に手を出してセックスを楽しむ。実にセックスが好きなこの女子は、小生などにはセックス依存症のように思える。
こういう映画を見ると、中国人の若い女というのは、実に尻軽だと思わせられる。そしてその尻軽さは、一体どんな文化的背景をもっているのかと、考えさせられてしまう。しかし、気になるのは、この女子が中朝国境のもっとも北側の町図門の出身になっていることだ。そうすることで、この女性は中国女性全体を代表しているのではなく、辺境の住民の例外的なケースだと言いたいかのようである。実際この女子は、Kポップスが好きで、中国人よりも韓国人との文化的親縁性を感じさせるように描かれているのである。
天安門事件の様子も描写されるが、それは政治的な事件というよりは、お祭り騒ぎのように描かれている。どういうつもりでそんな扱い方をしたのか。まともに扱う意図がないのだったら、むしろ事件に全く触れない方が良心的な姿勢というべきではないか。そんなわけで、この映画は、単なるポルノ映画の範疇に入るといわれても仕方のないところがある。なにしろ、過剰なセックス描写に満ちているのである。
なおこの映画は、中国国内上映禁止処分を受けたという。理由は、風俗紊乱ということではなく、天安門事件に触れたということらしい。
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