アポロンの馬車と竜:ルドンの幻想風絵画

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「アポロンの馬車と竜(Le char d'Apollon et le dragon)」と題されたこの作品は、「アポロンの馬車」とほとんど同じ構図である。ほぼ同時期に制作された。構図の違いは、画面の下側に竜を配したところ。もっとも竜は、胴体の一部がかいまみえるだけで、全体像が明確ではない。

竜の胴体の一部に矢が突き刺さっているのは、アポロンが放った矢であろう。アポロンの竜退治は、オヴィディウスの「メタモルフォーゼ」の中に出てくる大蛇退治から着想したのだろう。そのモチーフはドラクロアも取り上げているから、ルドンはドラクロアを参照しながらこれを描いたとも考えられる。

「アポロンの馬車」が茶系統の暖色主体なのに対して、こちらはブルーを中心に寒色でまとめられている。なお、肝心のアポロンは、輪郭が不明瞭で、いるのかいないのかわからないほどである。

(1910年 カンバスに油彩とパステル 75×60㎝ 個人蔵)






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