四谷荒木町でフグを食う

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四方山の幹事仲間で忘年会を催した。実は、この時節に、このメンバーで、大阪旅行するつもりでいたのだったが、なかなか日程のの調整がつかず、忘年会はフグ屋でやろうということになったのだった。みなさんそれぞれ多忙なのはいいことではある。

場所は四谷荒木町のフグ料理屋しほ瀬。昨年の今頃来たので、一年ぶりだ。五時半に集まり、フグのフルコースを食った。最初に煮凝りが出て、さしみ、から揚げ、てっちり、おじやの順だ。どれも山盛りなので満腹になる。その山盛りの料理を平らげながら、ひれ酒を楽しむ。おかげでかなり酔いが回ってしまった。この文章は翌日書いたのだが、午前中は二日酔いのせいで書けなかった。

まず、世相のことから話が始まる。今年はウクライナの戦争に続いて、イスラエルとガザの殺し合いが始まり、世界は混沌の様相を呈しているねと浦子が口火を切る。この殺し合いはハマスのほうが仕掛けたのだが、それに対するイスラエルの報復が常軌を逸している。女・子供もかまわず、皆殺しだ。おそらく今後も民間人の殺害は続くと思う。これはパレスチナ人にとっては、地獄に等しい状況に追いやられているのを意味する。でも、それは当然予想されたことで、イスラエル国家を相手に戦いを挑むことは、自殺行為に等しいといってよい。ハマスはなぜ、そんな無謀なことをやったのか。

そこで、小生が意見を述べる。まったくその通りだ。イスラエルのやっていることはジェノサイドにほかならない。そんな災いを招くとわかっているようなことにハマスが手を出したのは、いまのままではパレスチナ人の存在が忘れられてしまうことを恐れたからだろう。なにしろ、イスラエルと二国間関係を結ぶアラブ諸国が増えて、パレスチナ人は蚊帳の外に置かれるようになった。このままでは、イスラエルによるパレスチナ人への抑圧がまかりとおって、パレスチナ人は生存を脅かされるままだ。それに危機感をもったハマスが、この無謀な戦いを始めたのだと思う。歴史を振り返れば、イスラエルの建国はパレスチナへの侵略だったわけだし、その後も、イスラエルはパレスチナ人への迫害を続けてきた。そんな状態が、半永久化されることに、ハマスが危機感をもったことはわかる。

すると石子が、これはネタニヤフの仕業が大きい。かれは汚職問題とか内政上の問題を抱えていて、自分の存在を正当化するために、パレスチナ叩きをユダヤ人たち国民に見せている。要するに政治的パフォーマンスだ。

じっさいその通りだねと小生が相槌を打つ。ネタニアフはハマスを徹底的に叩きのめすことができるだろう。しかしそのことで、イスラエルとパレスチナの対立が終わるわけではない。むしろ今回のパレスチナ人虐殺は将来にむかって対立が一層激化する火種になるだろう。また、国際社会のイスラエルに対する見方も厳しくなるだろう。イスラエルは短期的には、つまり戦術的には勝っても、長期的・戦略的には敗北するということになりかねない。また、イスラエルに限らず、世界中のユダヤ人への憎しみをあおり、反ユダヤ主義が力を得るようになるかもしれない。じっさい、アメリカでも反ユダヤ主義が高まりを見せているというからね。

こんなわけで、今回のイスラエルとハマスの対立は、イスラエルのネタニヤフ政権がもっとも悪いというのが、我々の共通認識となった。

そんな我々の激論する様子を見ていた中居さんが、みなさんは仲がよろしいのですねと言う。喧嘩することはないんですか。我々答えて曰く、喧嘩するほど頻繁にあってはいないからね。それに半世紀以上のつきあいだし、互いに知りぬいているからね。みなさん大変元気そうですが、おいくつになりますか、ともいうので、おかげさまで七十五歳になりました。年の割にはお元気な印象ですね、そうも言うので、うまいものを食って、適度に運動するように心掛けているので、こうして人生を楽しんでいられます。

人生を楽しむといえば、お前は最近。道元とか仏教とか抹香臭いことばかりブログに書いているな、あんなもののどこが人生の楽しみと関係があるのかい、と石子が小生に言うので、道元の言っていることは、生きる喜びとはなにか、ということさと答える。すると、それならそうとはっきり書けばいいではないか、と石子は反論するが、宗教の問題はなかなか理屈では割り切れないので、そもそも議論にはなじまないのだよ。

国際関係論や宗教談議のあとは、四方山話にふけった。四方山話のついでに、大阪旅行の日程調整をした。また、次回の四方山話の会の日程も調整した。その結果、一月に四方山話の新年会を、二月中旬に大阪旅行をしようということになった。

さんざん食ってしゃべって、われわれは大いに満足した。やはりフグとウナギは満足感の度合いが高いね。そう言いあってフグの席を畳み、例のおじさんの店に移った。ここではどんな話をしたかあまりよく覚えていないが、石・浦の二子が岩子に向かって、今日のお前は普段と比べて非常に多弁だと言っていたから、岩子がよくしゃべったのだと思う。岩子はまた歌も歌った。この前元人気歌手とデュエットした曲を、今夜は一人で歌った。小生はビートルズのラヴ・ミー・ドゥーを歌った。石子はカラオケが始まる前に帰った。

そのころ、浦子がおじさんと内緒話をした。浦子は、この店に一緒によくきた男が、今日癌で死んだと伝えたのだ。するとおじさんはびっくりした顔をした。浦子が最近スマホでとったというその男の写真を見せてやると、おじさんは懐かしそうな顔をして、人間の命ははかないですな、と言った。たしかにそうだ。我々もいつ死んでもおかしくない年齢だから、友人が次々と死んでいくのを見るのは、ある意味仕方のないところだよ。明日は自分が死ぬかもしれないからね。

そんなわけで、今日は生きる喜びと、死ぬることの無常さを、こもごも感じた次第であった。





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