岡本喜八「ダイナマイトどんどん」 やくざの平和で民主的な抗争

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岡本喜八の1978年の映画「ダイナマイトどんどん」は、理屈抜きで楽しめる痛快な映画である。一応やくざの抗争がテーマということになっており、その点では菅原文太のはまり役であるが、その抗争というのが、平和で民主的なやり方で行われるというのがミソだ。その平和で民主的なやり方というのが、野球の勝敗で雌雄を決するというから人を食った話である。もっともやくざのやることだから、一貫して平和的というわけにはいかない。時には刀を振り回してやりあうこともある。そこが、野球に興じる場面と並んでこの映画の醍醐味になっている。

舞台設定は、昭和25年の北九州小倉。縄張りをめぐって二つのやくざ組織が対立している。その対立をなんとか収めようと思った地元の警察署長が、暴力は止めて平和で民主的な方法で競い合えと提案する。やくざが親睦組合を作って、その組合の主催という形で、組対抗の野球トーナメントをやろうというのである。これに地元のやくざ組織十二団体が乗り、組員たちを俄プレーヤーに仕立ててトーナメントを開始する。組の中でもっとも対抗意識が強いのは、菅原文太の所属する岡源組と、北王路欣也が所属する橋伝組である。両者は、勝ったほうが相手の縄張りを譲り受けるという条件で試合に臨む。互いに組の存亡がかかっているから負けられない。あらゆる手段を弄して勝ちにこだわるうちに、平和で民主的どころか、暴力的で威圧的な泥仕合になる。だが、いやみは感じさせない。そこは、菅原文太の人徳の賜物と言えよう。

面白いのは、日本のやくざの抗争にアメリカ軍のMPが深くかかわっていることだ。MPは、一方ではやくざと結んで暴利をむさぼりながら、他方では警察の保護者として振舞うことで、地域社会をコントロールしているのである。また、手の付けられないやくざ者は、沖縄に送り込んで強制労働に従事させる。昭和25年の時点では、沖縄は米軍の支配下にあったから、米軍はそこを自由勝手に使うことができていたのである。

映画の見どころは、菅原文太と北王路欣也の一騎打ちだ。北王路は当初は岡源組に身を寄せていたのだが、途中で橋伝組に乗り換えてしまう。それを裏切りととった菅原が、北王路をやっつけにかかる。だが北王路もしたたかもので、そう簡単にはやられない。この二人の対立は、沖縄の刑務所の中まで続くのである。映画は、その二人が最終的な決着をつけようと身構えるところを写しながら終わる。





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