ロン・ハワード「ダ・ヴィンチ・コード」:キリストの子孫

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ロン・ハワードの2006年の映画「ダ・ヴィンチ・コード(The Da Vinci Code)」は、ダン・ブラウンの同名の小説を映画化したもの。原作は、欧米のキリスト教諸国にすさまじい反響を巻き起こした。キリスト教の信仰の根幹にかかわることが、戯画的に描かれていることが、敬虔なキリスト教徒たちの怒りに火をつけたのである。

キリスト教では、キリストを聖化するあまり、キリストを神(正確には神の子)としてあがめているが、そのキリストを人間であり、人間の子としたうえで、そのキリスト自身がマグダラのマリアの腹に自分のタネを植えつけ、その子の子孫、つまりキリストの子孫が現代まで連綿と生をつないできたという、とてつもない説をこの原作は提示したのである。

そこで、その現代に生きているキリストの子孫は誰かということをめぐって、物語は展開していく。それにダ・ヴィンチの芸術を絡めてある。むしろダ・ヴィンチの存在感を強めることで、キリストにまつわるスキャンダラスな部分を緩和させようとしている。題名にキリストの名を入れず、ダ・ヴィンチの名を入れたのは、そういった配慮の現れだろう。

原作の趣旨は別として、映画のほうは、アクション・ミステリーとしてはよくできている。そこがファンの支持を集めて、囂々たる非難の嵐の中にかかわらず、記録的な興行成績を上げた。

なにしろ、欧米人の好きな陰謀論の類が、ここでは複雑に絡み合いながら、よくできたミステリー小説を読んでいるような、知的な好奇心をかきたててくれる。だから、不信心だとか冒涜的だとか、うるさいことを言わずに、気軽に楽しんでほしいというのが、制作者の意図だったようだ。制作者としては、キリスト教信仰に波風立てるのが本意ではなく、金さえ儲ければそれでいいのである。





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