深作欣二「バトルロワイアル」 優生主義的サバイバルゲーム

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深作欣二の2000年の映画「バトルロワイアル」は、ある種のサバイバルゲームを描いた作品。ある種のというのは、文字通り命を懸けたゲームで、数十人の中から生き残れるのはたった一人だけというものだ。そのゲームを、どうも日本国家が率先して実施している。健全な青少年を育成するには、腐敗分子を間引く必要があるという思想が、そこには感じられるのである。したがってこれは、明らかに優勢主義思想の落とし子である。この映画は、日本でより欧米で評判になったそうだが、欧米ではこんなにあからさまな優生主義思想は受け入れられる余地がなく、したがってこんな映画は作られないからであろう。

さる中学校の一クラスの成員全体が、このゲームの参加者に選ばれる。彼らは修学旅行でどこかへ向かう途中、睡眠ガスを放射されて全員が意識を失う。目覚めると首輪をはめられている。かれらは一室に集合させられ、そこでゲームの主催者から、これから行うべきゲームの概要を聞かされる。ゲームは三日間続き、その間に互いに殺し合いをせねばならぬ。その殺し合いの結果一人だけ生きのこったものが、ゲームの勝利者として引き続き生きることができる。もしゲーム終了時に複数の者が生き残った場合には、全員死ぬことになる。この過酷なゲームを主催するのは、じつはかつてこのクラスの担任を務めた教員(北野タケシ)なのである。北野は、現役時代このクラスの生徒たちにさんざんバカにされたことで、かれらへ復讐する意趣も抱いているのである。

かくてゲームが始まる。これまでクラスメートだった若者たちが、互いに疑心暗鬼になって、自分だけは生き残りたいと考え、次々と殺し合いを始める。なにしろ三日の間に、40数人の生徒たちを、一人だけ残して死なさねばならぬので、殺し合いは凄惨を極める。映画は、藤原竜也演じる男子生徒と、前田亜季演じる女子生徒を中心に展開する。それに山本太郎演じる生徒が加わる。山本は、いまではユニークな政治家として知られるが、この映画に出たころは、まだ駆け出しの俳優だった。彼にとってこの映画は、はじめての準主役級といってよい。

結局藤原と前田だけが生き残る。なぜか北野は、ふたりとも生かしやることにする。その北野は、生徒たちに過酷な殺し合いを強いながら、生きるために頑張りなさいと激励したりする。国家としては、よりましな人材を残すために、個々の生徒には精一杯頑張ってほしいのだ。

深作欣二と言えば、日本社会を冷笑的な視点から眺めるような映画を作ってきた。それに、これもまた冷笑的なギャグを売り物にする北野が加わって、全体として日本社内を冷笑するような作品に仕上がっている。






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