ティトゥスの肖像:レンブラント

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レンブラントは息子ティトゥスの肖像画を、子どもの頃から何枚も描いた。これは1656年のもの。この時のティトゥスは15歳だった。絵の中のかれの表情は落ち着いており、ずっと年上に見える。このティトゥスの為にサスキアが残した遺産を、レンブラントは本人に渡してやろうとして、豪邸の所有権をティトゥス名義にしたいと思ったのだったが、裁判所はそれをみとめず、残った財産のうちのわずかな部分しか渡してやることができなかった。レンブラント自身の割り当ては、借金返済のために競売に付されてしまったのである。その際に、手元に保有していた自分の作品の多くも流出した。

ティトゥスは赤い帽子をかぶり、髪は長く伸ばしている。また僧衣のようなものを着て、正面を向いているが、その表情にはやや憂いのようなものが感じられる。目には父親のレンブラントの面影が見えるが、全体的な印象としては、あまり似ているとは言えない。母親似だったのだろう。(1656年 カンバスに油彩 67.3×55.2㎝ ロンドン、個人蔵)

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これは「カプチン派修道僧の姿をしたティトス」。ティトゥスが19歳の時の作品だ。これが、ティトゥスの肖像画として描かれたのか、それとも歴史的な人物、たとえばアッシジのフランチェスコのモデルとして描かれたのか、詳しいことはわかっていない。わかっているのはモデルがティトゥスであることだけだ。なお、ティトゥスは薄命で、父親の死の前年に死んでいる。享年わずかに27歳であった。(1660年 カンバスに油彩 85×78㎝ アムステルダム、国立美術館)






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