核ゴミの自区内処理と海洋放出

| コメント(0)
福島第一原発の核汚染水がいよいよ溢れそうになるというので、海洋放出する方針を政府が固めたようだ。環境基準以下に薄めた上で放出するから、環境への影響は無視できるほど少ないと政府は言っているが、風評被害を恐れる漁業者は大反対している。じっさい、いくら薄めた所で、絶対量は変わらないので、長期的に見ればなんらかの影響は避けられない。しかし、そんな影響を気にしていたら、いつまでも問題は解決しないので、見切り発車で海に垂れ流してしまおうという政府の甘い判断が伝わって来る。

福島から出た核汚染水を、福島の海に垂れ流そうというのであるから、これは一種の自区内処理といってよい。ゴミの自区内処理の原則は、あの東京におけるゴミ戦争を教訓にして確立された原則であるから、ある程度国民の納得を得やすい。じっさい政府の今般の方針に、強く反対する意見は、漁業者のそれを除いては、あまり聞こえてこないのが現状だ。おそらく、漁業者の声を聞き流しながら、政府方針は「粛々と」実施される公算が高い。何しろ今の日本の政権は、唯我独尊的で、国民を上から目線で見下ろしているから、多少の声があがったところで、痛くも痒くも感じないだろう。

一方、各地の原子力発電所から出た核ゴミについては、どこか一か所に集めて、集中的に処理する方針で動いている。その処理地候補として名乗りを上げる自治体もある。どういうつもりかはっきりしないが、どうも調査協力金が目当てらしい。処理地候補として名乗りをあげれば、幾段階の調査を通じて、最終的な決定がなされるので、それまでの期間は協力金がもらえる。自治体としては、協力金がもらえるというメリットがあり、国としては複数の自治体から最も適したところを選べる利点があるというので、国・自治体双方にとって都合がいいということらしい。

しかし、名乗りをあげた自治体が、最終的に核ゴミの処理を受け入れるかどうかは、かならずしも明確ではないというから、どうもわからない話である。協力金を貰って、処理受け入れは返上する、というようなことを考えているようにも伝わって来る。だが、そんな食い逃げのようなことが、まかり通るとも思われない。

原発立地自治体としては、第三の自治体で核ゴミの一括処理を引き受けてくれれば、こんなに都合のよいことはない。しかし、そう簡単に問屋がおろすだろうか。最後には、福島同様、立地自治体において自区内処理をするように動いていくのではないか。また、その方が自然でもある。原発を誘致するということは、リスクを背負う決心を迫られるということを、関係自治体の住民はよく理解すべきなのだ。





コメントする

アーカイブ