すれ違いの日中外相会談:邦人拘束、早期解放は見込めなさそうだ

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林外務大臣が中国へ出かけて行って、秦剛中国外相との間の会談に臨んだ。これは一応、岸田首相と習近平との間の日中関係正常化の合意を踏まえたものとされているが、先日起きた中国当局による日本人ビジネスマンの拘束が背景にある。日本政府は、この問題が深刻化しないうちに、中国側に働きかけ、なんとか開放されるように働きかける意図があったものと考えられる。だが、日本側の意図は、簡単に実現する見込みはないようだ。新聞の伝えるところによると、議論は平行線をただよい、まともな合意は何もなされなかったようである。

今回の邦人ビジネスマン拘束の背景には、日中関係の政府レベルでの強い緊張があるものと思われる。日本がアメリカの対中半導体輸出規制の強化に同調したり、駐日中国大使の離任にともなう儀式を日本側が無視したりしたことに、中国側が強い不快感を抱いていることは否定できない。その不快感が、今回の邦人拘束につながったのだと思われる。

林外相は、この問題のほかに、尖閣諸島への中国船による侵入や、台湾をめぐる中国側の一方的な行動を強く批判するとともに、ウィグル人に対する人権抑圧にも懸念を表したが、中国側は、それに反発し、日本による対中敵視姿勢を強く非難した。日本はアメリカという「悪人」の「手先」になるなとまで言ったといわれる。要するに議論は全くかみ合っていないわけである。にもかかわらず林外相が、そうなることを半ば見越しながら対中会談の実現にこだわったのは、中国との間に対話のパイプを残し、日中対立が先鋭化しないように配慮したからだといわれている。

とはいえ、今回の日中会談は、やはり異常さを感じさせる。とても友好的な雰囲気ではなく、逆に罵り合っているような印象を与える。じっさい中国側は、この対談の行われている時間帯に、尖閣諸島への過去最大規模の侵入を実施しているのである。これでは到底、まともな二国間関係とは言われないであろう。





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