アメリカ映画「ブラック・クランズマン」:KKKと黒人警察官

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2018年のアメリカ映画「ブラック・クランズマン(BlacKkKlansman スパイク・リー監督)」は、白人至上主義団体KKKをモチーフにした作品。1970年代のコロラドを舞台にして、警察とKKKの戦いを描いている。そこに、黒人の警察官を登場させ、アメリカの警察組織がもつ問題も絡めて取り上げている。アメリカの警察自体が非常に人種差別的で、黒人に対して暴力的だった歴史があるので、そのアメリカの警察が黒人を使って人種差別団体を取り締まるという発想が、非常に強いインパクトをもった。もっとも、この映画が作られたのは、2018年のことで、その時代には黒人の警察官も珍しくはなかった。しかし、警察の人種差別体質が根強いものであり、黒人をわけもなく殺していることは、近年のフロイド事件はじめ多くの事件が明らかになっているとおりである。

KKKは、1910年代に最初の高揚気を迎えたが、それにはグリフィスの映画「国民の創世」が大きな影響を与えた、といふうにこの映画の中でアナウンスされる。グリフィスの映画は実にひどい人種差別意識に満ちており、黒人を悪魔のように描く一方、KKKを悪魔と戦う英雄のように描いていた。それに刺激された一部の白人至上主義者たちが、公然と結社を作って黒人に対してリンチを加えたという歴史がある。アメリカは、近代に入っても暴力がものをいう野蛮な国だったのである。その後、人種差別に対するアメリカ人の意識が高まり、KKKのような露骨な運動はさすがに下火になっていったが、近年トランプが登場し、大統領みずから人種差別を煽るようになると、それに励まされた白人至上主義者たちが、再び勢いを得るようになった。この映画は、そうしたアメリカ社会の変化に敏感に反応したものといえる。

一応1970年代が舞台となっているので、当時の状況を踏まえた内容である。この映画には原作があって、それを書いたのが、この映画の中に出てくる黒人警察官だというので、かれの実体験をそのまま映画にすればよいわけである。映画の中で主なテーマになっているのは、KKKの地方組織の活動ぶりとか、かれらが敵視する黒人団体とかだが、後者の代表的なものとして、ここではブラック・パンサーが取り上げられる。そのブラック・パンサーの指導者が演説するシーンを見ると、白人による黒人のひどい迫害ぶりが伝わってくるのだが、その内容というのが、フロイド事件であぶりだされた今日の状況と全くといっていほど変わっていないのである。

この映画の中の黒人警察官は、子どものころから警察にあこがれていたと言っている。だから自分の仕事に誇りをもっているのだが、そのあこがれの警察から色々ひどい差別待遇を受ける。それでも折れずに職務に励むのだが、そんなかれを黒人コミュニティは受け入れない。愛してしまった黒人女性からは、警察官なんかと付き合うのはごめんだといわれる。きみの命を救ってやったじゃないかと言っても、彼女は黒人が警察官であることを認めない。警察は白人のためにあるもので、黒人は迫害の対象でしかない。そんな警察を黒人たちはピッグ(豚)と呼んで敵視しているのである。

この映画の中では、KKKは黒人のほかユダヤ人にも敵対意識をもっている。映画の中で黒人警察官とコンビを組むのはユダヤ人なのだが、かれは出自を偽ってKKKに潜入する。もしユダヤ人であることがばれたら、それだけの理由で殺されかねないのである。ユダヤ人はいまや、トランプの娘婿になるくらいに、権力の中枢にも手を伸ばしているが、コロラドのような片田舎では依然迫害の対象であるということが、この映画からは伝わってくる。






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