ミャンマーの未来に希望を感じるか

| コメント(0)
ミャンマー情勢については、日本のメディアはあまり伝えないので、詳しいことはわからなかった。それでも2021年2月に軍がクーデターを起こして以来混乱状態に陥り、軍も全国を掌握できず、反軍勢力も軍政を倒す勢いを持たないで、ずるずると膠着状態になるのかなと思っていた。そんなミャンマーに希望を持っている人がいる。ミャンマーで長年民主化運動にかかわってきたキンオーンマー女史だ。雑誌「世界」の最新号(2023年8月号」に掲載されたインタビュー記事のなかで、その希望を語っている。「ミャンマーの将来について、今ほど希望を感じたことはない」と題したそのインタビューの中で、女史は遠くない将来にミャンマーが民主化され、国際社会に復帰できる見込みを語っているのである。

その理由を女史はいくつかあげている。軍の実効支配が及んでいるのが国の面積の20パーセント未満にすぎず、反軍政力を代表する国民統一政府(NUG)が国の52パーセント以上を支配していること。市民の不服従運動が力を持ち、40万人以上の公務員が軍の支配下で仕事をするのを拒んでいること。多数の少数民族が団結を強め、自ら武装するなど軍への対抗姿勢をあらわにしていることなど。これらの事情を背景に、軍の統治能力は著しく弱まり、国民から遊離して滅亡するのは時間の問題だと女史は考えているようである。

一つ興味深いと思ったのは、女史がアウンサンスーチーの国民統合力に強い期待を持っていることだ。軍が彼女に挑戦したとき、彼女は世界中にむけて、民主主義を守るという名目で支援を呼びかけたのだったが、各国とくに先進諸国からの具体的な支援はなかった。小生はそうした事態を見ても、アウンサンスーチーに同情する気にはなれなかった。彼女は、軍によるロヒンギャへの虐殺行為を非難することなく、かえってそれを擁護したくらいだ。ということは、弱者に向かっては高圧的に振舞ったわけだ。その、高圧的に振舞った人間が、自分が高圧的に振舞われると、別に支援を求めるというのは、虫のよい話だと思ったのである。

だが、アウンサンスーチーはいまだにミャンマー国民の敬愛を集めており、国民を統合するためのシンボル的な役割に彼女ほどふさわしい人はいない、と女史は考えているようだ。ロヒンギャの問題は、たしかに国際社会から非難されても仕方がないが、しかし一般のミャンマー人はそうした問題を知らなかった。いまでは、ロヒンギャの人々と連帯し、共存することを考えている。だから、アウンサンスーチーの旗印の下で、ミャンマーの民主化が進んだならば、ロヒンギャもミャンマー社会に溶け込むことができるだろと、かなり楽観的に考えているようである。

民主化に向けての支援への要請に、先進諸国は応えなかったばかりか、軍政を相手にビジネスをしている国さえある。日本はその代表であると女史はいう。しかしそれにはリスクが伴うということを日本は自覚すべきだ。もし軍政が倒れて、その犯罪について責任を問われるときには、資金面で軍政に加担した日本も責任を問われることになるだろう。日本はそのことを十分頭にいれておくべきである、と女史は言うのである。そんな女史の言葉を、日本の岸田政権は無視するべきではないだろう。





コメントする

アーカイブ