ジョン・フォードの映画「男の敵」:仲間を売った男

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ジョン・フォードの1935年の映画「男の敵(The Informer)」は、1920年代のアイルランド独立戦争を背景にして、仲間を売った男の末路を描いた作品。ジョン・フォードはアイルランドの出身であり、祖国に強いこだわりをもっていた。西部劇作者として出発したフォードだが、アイルランドへの思い入れが、このような作品を作らせたのであろう。

1922年のダブリンが舞台である。アイルランド独立を目指す団体のメンバー達の人間関係がテーマである。そのメンバーの一人が、イギリス側によって懸賞金付きで指名手配される。その仲間の一人がこの映画の主人公ジポ(ヴィクター・マクラグレン」である。ジポは金に困っており、恋人のケイティが金のために街娼まがいのことをしていることに胸をいためる。そんな折に、指名手配中のメンバーと出会い、かれをイギリス側に売るのだ。イギリスは、アイルランドの独立派を力で抑え込むために、「タン」と呼ばれる臨時治安部隊を常駐させている。ジポはそのタンに仲間を売るのだった。

大金が手に入ったジポは早速大判振る舞いを始める。根が単純な性格なのだ。この映画の見どころは、ヴィクター・マクラグレン演じるジポのお人好しのふるまいぶりにあるといってよい。ヴクター・マクラグレンは、以後フォード映画の常連となり、老いてなお「静かな男」でのマッチョぶりを見せたものだったが、かれの演技としては、この「男の敵」が白眉だろう。

ジポは、仲間のメンバーたちによって行動を追跡されたあげく、査問委員会にかけられて有罪を宣告される。いったんは脱出したりするが、結局は銃弾を浴びて落命するのだ。

映画はあくまでもジポの生き方に焦点を当てており、アイルランド戦争については、背景として言及しているにとどまる。






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