田舎の食堂:ボナール

| コメント(0)
bonnard1913.1.jpg

ボナールは1912年に、セーヌ川の下流にあるヴェルノンに家を買い、それを「マ・ルーロット」と名付けた。ルーロットとは、フランス語で「トレーラーハウス」という意味である。ただ寝るだけの粗末な家と謙遜しているのだろう。「田舎の食堂(La Salle à manger à la campagne)」と題されたこの絵は、そのルーロットを描いた作品。

一見して構図の異常さに気づく。画面正面のドアや柱は真正面から見た角度なのに、手前の白いテーブルや、その背後の壁沿いの家具は、左斜めからの角度である。要するに同じ画面に複数の視点が交差しているわけであり、その点では、セザンヌ晩年の静物画と通じ合うものがある。

色彩は鮮やかである。特に赤がきいている。画面右手、窓の外側にいる女性も赤で描かれているが、彼女には表情らしいものがない。ボナールは、人物を添え物のように描く傾向があって、その内面には大した関心を払っていない。 

(1913年 カンバスに油彩 165×205㎝ ミネアポリス美術院)






コメントする

アーカイブ