花咲くあんずの木:ボナールの世界

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「花咲くあんずの木(L'Amandier en fleur)」と題されたこの絵は、ボナールの絶筆といわれる作品。ボナールがル・カネの家で死んだのは1947年1月23日だが、その数日前に、甥のシャルルに命じて、画面の左下の緑の草を黄色に塗り替えさせたという。

画面いっぱいに咲き広がるあんずの白い花の色が圧巻である。その白をボナールは、ブラシで絵の具を叩きつけるようにして塗りつけている。そこにボナールの生命力の激しさを感じることができる。

ボナールの風景画には、大体人間か動物の姿があるものだが、この絵はそうした一切のものを排除して、ひたすら樹木の生命力を描ききっている。その樹木の生命力にボナールは、死にゆきつつある自分の生命力への保障のようなものを感じたのであろうか。

(1947年 カンバスに油彩 55.0×37.5㎝ パリ、国立現代美術館)





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