キャロル・リード「邪魔者は殺せ」:アイルランド紛争の一こま

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キャロル・リードの1947年の映画「邪魔者は殺せ(Odd Man Out)」は、アイルランド紛争の一こまを描いたものだが、紛争の現実そのものには触れておらず、アイルランドの独立派の一部が、闘争資金をかせぐために強盗を働く様子を描いている。そういう意味では、ちょっと高級感のあるギャング映画といってよい。

ギャング映画というと、何も大義をもたないと思われがちだが、この映画の中のギャングたちには、アイルランド独立という大義がある。その大義をところどころ感じさせるように作られているので、すさんだ暴力映画とはおのずからk異なっているのであるが、暴力的に金を奪おうとする点ではギャングと変わりはないのである。

キャロル・リードはこの映画を、グレアム・グリーンの小説をもとに作ったのだが、グリーンの原作には、やはりアイルランド紛争にたいする彼なりの思いこみがあったらしい。リードはそういう思い込みをなるべく排除して、純粋なサスペンス映画に仕立てたいと思ったようだ。サスペンス映画としては、この映画はよくできている。

強盗は結局失敗して、リーダーのジョニーは愛人のキャスリーンともども警察に包囲されて銃殺され、そのほかのメンバーもろくな末路をたどったわけではない。かれらにはアイルランド独立という大義があったかもしれないが、大局的に見れば、社会の邪魔者に過ぎないといった冷めた視線を感じさせる映画である。

見どころは二つある。一つは白黒映像の美しさだ。明暗対比を極端に強調した画面作りは、バロック的といってよいほどだ。もうひとつは、モンタージュ手法を駆使して、躍動感のある画面作りに成功していることだ。モンタージュ手法は、躍動的な画面作りにむいており、その特性をリードは最大限発揮させている。





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