モルは今や裕福な商人の妾として囲われる:ホガース「娼婦の遍歴」シリーズから

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ウィリアム・ホガースの版画シリーズ「娼婦の遍歴(A Harlot's Progress)」第二作目は、「モルは今や裕福な商人の妾として囲われる(Moll is now a kept woman, the mistress of a wealthy merchant)」と題する。女衒の餌食となったモルは、まず裕福な商人に売られ、妾となった。そのモルのもとに、旦那がやってきた時の様子を、この絵は描いている。

この裕福な商人はユダヤ人であり、かれがモルに与えた贅沢品からして、植民地で富を築いたことを思わせる。インド人の少年を召使として与えていることから、インド貿易で富を築いたのであろう。ほかに、若い女性の召使や犬も与えている。女性の召使が一緒にいる男は、モルの愛人。旦那がやってきたので、忍び足で姿をかくすところなのである。

モルは、旦那に向かってテーブルを蹴り上げている。びっくりした旦那がモルのほうに振り向き、その隙間に愛人を逃がそうというわけだろう。びっくりしたのは旦那だけでなく、犬も少年もびっくりした表情をしている。

モルの部屋は豪華である。壁には大きな絵がかけられ、窓には分厚いカーテンが施されている。蹴ったひょうしに、テーブルから陶器が落ちてくだけているが、この陶器も東洋から仕入れた高価なものに違いない。






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