ヘンリー六世 Hollow Crown シリーズ第五作

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2017年劇場公開のイギリス映画「ヘンリー六世第一部(Henry VI Part 1)」は、BBCのHollow Crown シリーズ第五作。「ヘンリー六世」は、シェイクスピアの原作は三部作だが、映画は二部作に仕立てた。第一部は、グロスターの殺害までをカバーしている。グロスターの殺害でランカスターとヨークの対立を中和する存在がなくなったことで、イギリスは内乱に突入するわけである。いわゆる薔薇戦争である。

映画は、冒頭でヘンリー五世の死とヘンリー六世の誕生を紹介した後、いきなり17年後に飛ぶ。この年に、ランカスターとヨークの対立が表面化した。だが、摂政のグロスターはじめ、ランカスターのほうが権力を握っている。それに対して、ヨークの領袖リチャード(後のリチャード三世の父親)は虎視眈々と王権を狙っている。

第一部のハイライトは、フランス軍との戦争と、ジャンヌ・ダルクの火刑のシーンだ。ジャンヌ・ダルクは、緒戦ではフランス軍を勝利に導いたが、やがて劣位に立たされ、ヨークの捕虜になる。ヨークはジャンヌを魔女裁判にかけ、火刑を宣告。早速火刑台が用意され、ジャンヌは生きたまま火あぶりにされ、焼き殺される。この場面は、有名なフランス映画「裁かるるジャンヌ」を踏まえた仕立てになっている。

フランス軍を破ったついでに、サマセットがアンジュー公の娘マルグリットを捕虜にする。かれはマルグリットに一目ぼれするのだが、どういうわけか、彼女をヘンリー王の妻にする計画を立てる。とはいえ、愛人関係は続けるのである。

マルグリットがヘンリー六世の王妃となったことで、権力のバランスがかわりはじめる。白薔薇赤薔薇の対立を前に、マルグリット自身は、党派心はないようだが、グロスター夫妻が憎くてたまらない。ヨークはヘンリーを子ども扱いして権力をは離さないし、グロスターの妻はおごり高ぶって王妃を軽んじているからだ。かくして、マルグリットが先に立って、グロスター夫妻の排除に乗り出す。まず夫人を始末した後、グロスターを殺害させるのである。

映画の第一部はそこで終わっている。ただ、グロスターの暗殺をきっけかけにヨークとランカスターの対立が激化し、ヨーク公リチャードが王権への執着をむき出しにする。映画のラストシーンは、かれが三人の男の子を呼び出す場面だが、その中の一人が背虫のリチャード、つまり後のリチャード三世なのである。

なお、マルグリットを演じたソフィー・オコネドーの父親は、ナイジェリア人だそうだ。






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